否認貫き、宣告に涙

 判決理由を聞く須藤早貴被告(イラストと構成・田村角)
 判決理由を聞く須藤早貴被告(イラストと構成・田村角)
 すすり泣く声が法廷に響いた。和歌山地裁で12日に言い渡された資産家男性殺害事件の判決。「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さん=当時(77)=の殺害を一貫して否認してきた元妻須藤早貴被告(28)は、「被告人は無罪」と宣告され、間もなく涙を流した。時折髪を触る手元は、小さく震えていた。

 象徴的だった黒いロングヘアを巻き、上下黒のスーツ姿で入廷した。証言台前のいすに座ると、マスクを外してまっすぐ裁判長を見つめた。判決理由を落ち着いた様子で聞き入っていたが、弁護人からハンカチを渡されると目元を拭った。

 約40分の言い渡しを終え、裁判長が「判決は以上です」と告げると、ゆっくりうなずいた。法廷を出る裁判員に頭を下げ、刑務官に付き添われて立ち去る際にも裁判長に一礼した。別の詐欺罪で実刑が確定しているため釈放はされなかった。

 9月の初公判では、か細い声だった元妻。11月の被告人質問にははっきりとした口調で「このタイミングで死んだせいで、私は何年も人殺し扱い」と怒気をにじませることもあった。