Free腎臓の指定難病ADPKD 新薬に一筋の光 透析回避も

「早期の治療開始でQOLは格段に良くなる。まずは病気のことを知ることが大切」と話す佐藤一範医師=八戸市
「早期の治療開始でQOLは格段に良くなる。まずは病気のことを知ることが大切」と話す佐藤一範医師=八戸市

腎臓で「嚢胞(のうほう)」が増大する遺伝性の疾患「常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)」。根本的な治療法がなく、最悪の場合は腎不全に陥る指定難病だ。ただ、近年は進行を遅らせる新薬が登場し、人工透析を受けずに済む可能性が出てくるなど、QOL(生活の質)向上の面で一筋の光が見え始めた。八戸赤十字病院泌尿器科部長の佐藤一範医師は、早期発見、早期治療の重要性を訴え、「まずはこの病気を多くの人に知ってほしい」と強調する。

 ADPKDは左右の腎臓で体液が詰まった袋状の嚢胞が増大し、腎機能に影響を及ぼす疾患だ。要因は遺伝子異常とみられている。

 難病情報センターによると、国内では約3万1千人の患者が存在し、4千人に1人が発症すると推計されている。青森県内の患者数は把握分だけで約90人。実際はさらに多いとみられ、佐藤医師によると人口比で320人以上と推計できるという。

 30~40代まで無症状なのがほとんどで、個人差はあるが、次第に血尿や腹痛、腰痛、背部痛などが出現する。患者の約半数が60歳までに人工透析が必要となり、くも膜下出血など合併症の恐れもある。

 両親のいずれかがADPKDの場合、子どもに遺伝する確率は50%。発症してからの受診で見つかる患者もいれば、健康診断や他の疾患の検査で発見される例もある。

 発症後は、主に進行を抑制するための処置が行われるが、嚢胞の増大で腎機能が失われてしまうと、1回につき4、5時間、週に2、3回程度の人工透析が避けられなくなるという。

 ただ、近年は症状の進行速度を抑える薬剤「サムスカ(一般名トルバプタン)」が登場。排尿頻度が高まる副作用はあるものの、腎不全になるまでの時間を延ばすことができ、患者によっては人工透析を受けずに済む可能性も出てきた。

 新薬の活用について佐藤医師は「人工透析を受ける場合と比較して、確実にQOLが向上する」と解説。高齢化に伴い人工透析患者が年々増加している点を指摘し「患者の経済的負担を軽減でき、国の医療費抑制にもつながる」とメリットを挙げる。

 しかし、腎機能が著しく低下した場合は新薬を服用できないため、早期の治療開始が鍵となる。

 佐藤医師は「家族に病歴があれば、ある程度の予測ができる。少しでも早い段階で医療的な介入をし、最終的にはこの病気の透析患者を減らせれば」と、病気への理解を深める重要性を訴える。

 
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