Free【春の新聞週間】奈良美智さんに聞く
日本新聞協会とデーリー東北新聞社など全国の会員新聞・通信・放送社は、4月6日に始まる「春の新聞週間」に合わせ、美術家の奈良美智(弘前市出身)にインタビューした。新聞に対する思いや活字・新聞を読む魅力などを聞いた。
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毎日、いくつかの新聞を読んで、ツイッターを見る。社会的な事柄やニュースはそうやってチェックする。一つ気になることがあると、分かるまで調べる。自分の場合は美術だが、農業でも漁業でも、自分の核となるような、勉強したもの、学んだものがまずあって、そこから離れていろいろなものを吸収していくことが大切だと思う。
「興味があるからこれを読む」というより、目に入るもの全部に興味があり、バーッと読んでしまう。中でも自分のよく知る人、(留学していた)ドイツなどよく知っている国、そういうものには反応してしまう。
特に東北のニュースはよく読む。東日本大震災以降、それまでは関心もなかったのに、東北とか北国とか自分の生まれ育ったところ、ルーツに興味を抱くようになった。「風景がきれい」とか「人が優しい」とか、そういうイメージだけではなく、地域の歴史や負わされてきた役割、そういったものが見えてきた。メディアには震災の記憶を風化させない取り組みを続けていってほしい。
ほのぼのしたニュースもつい探してしまう。新型コロナウイルスとか地球温暖化問題とか、どうしてもネガティブだったり悲惨な気持ちになったりするニュースの合間に「巨大なイカが見つかった」とか「流氷がそこまで来ている」とか。
一つの考え方に凝り固まるのが嫌だ。メディアは幅広い層に、さまざまなことを偏りなく伝えるのが役目。一方、受け取る側はいろいろなメディアに触れ、トータルで判断してほしい。一つのものしか見ないと、その人はそれだけで出来上がってしまうから。
【略歴】奈良美智(なら・よしとも)1959年、弘前市生まれ。愛知県立芸術大学修士課程を修了し、ドイツの国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに学ぶ。作品はニューヨーク近代美術館、大英博物館(ロンドン)、青森県立美術館など、国内外の美術館に所蔵されている。61歳。