Free樹齢300年のシダレザクラ、クローン苗木植樹/野辺地・西光寺

野辺地町にある推定樹齢300年以上の青森県指定天然記念物「西光寺のシダレザクラ」と同じ遺伝子を持つ苗木が26日、同寺境内地に植樹された。接ぎ木により増殖して育てられたクローンの苗木だ。寺の関係者は樹勢に衰えが見える親木の後継樹の〝里帰り〟を喜び、成長を願った。
西光寺のシダレザクラは樹高約5㍍に達する巨木。植栽された時期は不明だが、寺によると、1905年に書かれた「野辺地沿革大要」は、廻船業を営んでいたヤマイチ野坂家が1795年に大阪から取り寄せ植えた―と伝えているという。
これが事実なら今年で280年。推定樹齢が300年以上であるため、樹齢年以上の木が運ばれてきたということになる。
真偽は別として、それほど長く生き続けてきたということだろう。本来の自生地ではない青森県で樹齢が300年以上となるのは貴重で、県内のシダレザクラでは、弘前市天満宮境内にある桜に次ぐ屈指の古木という。2011年に県天然記念物の指定を受けた。
一方、このシダレザクラは、幹の空洞化が進むなど樹勢が衰えていた。1987年に樹木医が樹勢回復の点滴を注入。2019年にも樹木医が処置している。
2023年、寺の総代が樹木医を通じ、巨樹や名木のクローン増殖に取り組む森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センター東北育種場(岩手県滝沢市)に増殖を依頼した。「林木遺伝子銀行110番」という事業だ。
同育種場は2023年2月にシダレザクラから穂木を採取し、台木に接ぎ木。20本のうち10本の育成に成功した。今回はこのうち3本が里帰りした。
26日は境内南東側の場所で苗木1本の植樹が行われ、飯田真純住職や総代、檀家らが一人ずつスコップで土をかぶせた。苗木は高さ約120センチ。立ち会った同育種場の竹田宣明・遺伝資源管理課長は「無事にお返しできてほっとした。大きく成長してくれると信じている」と語った。
親木は痛んでいるものの毎年美しい花を咲かせ、町民を楽しませる。今春は今が見頃だ。飯田住職は「シダレザクラは野辺地に方々に大事にされてきた。植樹した苗木も皆さんに親しまれる桜に成長してほしい」と願っていた。
残る2本の苗木については今後、町関係者と相談して植栽する場所を決めるという。
※紙面記事に加筆したデジタル限定の再編集版です
