Free送り彼岸に「シホウドメ」 地域の安泰祈る 六ケ所・平沼

地域の女性らが念仏を唱えながら数珠を回す百万遍。悪い病気や悪霊を追い払うための民俗行事だが、六ケ所村の平沼地区では「シホウドメ」と呼ばれ、今に伝わる。送り彼岸に当たる23日、住民約10人が4カ所で数珠を回し、地区の安泰を祈った。
悪病などが地区に入ってこないように4カ所を回って「四方を止める」ことから、その名で呼ばれているようだ。六ケ所村史も「シホウドメ」とカタカナ表記で紹介する。村内では出戸地区でも行われている。
平沼地区で使用される数珠には「文政七年」を示す刻印がある。江戸時代の1824年に作られたとみられ、数珠を納める平安寺元住職の葛西満永さん(86)は「数珠回しだけだったかもしれないが、その頃から行われていたのではないか」と話す。ただ、いつから始まったかは定かではない。
前日の22日に住民が寺に集まり、幣束、ワラを使って男女に見立てた1組の人形、草履の片方、人と馬のわらじをそれぞれ片方のほか、木で小さなきねと刀を作った。これにバラの小枝を加えた一式を計四つ用意した。なぜ履物が片方だけなのかは分からないという。
23日は住民が平安寺を車で出発。集落の4カ所を巡り、各所で「南無阿弥陀仏」を特徴的な節回しで唱えながら数珠を左送りで回した。1回の時間は2~3分。数珠には大きな玉が二つあり、自分の所に来ると顔の前に持ち上げた。その間に、女性2人が「ちゃんと厄を払れよ(払えよ)」などと声をかけ、ワラ人形などを木に結び留めていた。
葛西さんの妻ナツエさん(85)は50年以上前から参加しているという。かつては歩いて集落を回り、終えると寺で食事を囲んだという。「食べ物を持ち寄ったり煮しめを作ったりして楽しんでいた」と懐かしむ
。
瀬川鈴井さん(88)も長く参加している一人。「参加すると気持ちが落ち着く」と語り、平安寺の檀家(だんか)で庄内地区から初めて参加した山口成明さん(81)は「伝統をみんなで伝えている。ありがたいこと」と風習の大切さに思いをはせた。