Free農業や困っている人守る 昨年就農・久保沢さん夫婦(八戸)

地域農業や居場所づくりへの思いを込めてお渡し会を開く久保沢卓さん(右)、麻美さん=21日、八戸市
地域農業や居場所づくりへの思いを込めてお渡し会を開く久保沢卓さん(右)、麻美さん=21日、八戸市

「地域農業を活気付けたい」「社会の居場所づくりをしたい」。2023年に就農した八戸市の久保沢卓さん(38)、麻美さん(38)夫妻が来年1月4、5日、同市六日町のカフェ「デリカフェペルチ」で、ひとり親世帯を対象とした白米やお弁当の「お渡し会」を初めて開く。コメは農業体験に参加した子どもらが田植えしたものだ。この地域を何とかしたいと思い立った2人は、「農業や困っている人のためになりたい」と意気込む。

 卓さんは別業種の勤務を経て、元々関心のあった農業の世界に飛び込んだ。ホタルなどが生息する水がきれいな同市南郷島守で、農薬や化学肥料を使用せずにササニシキなどを育てる。

 現在の栽培面積は1ヘクタールほどだが、「今後はより広くなると思う」と複雑な表情を浮かべる。高齢化などを理由に、規模縮小や離農予定者の農地を引き受けるためだ。全国的な担い手不足や24年の価格高騰に触れ、「このままでは毎年コメ不足を繰り返してしまう」と危機感をにじませる。

 地域のコメ作りを守るため、耕作放棄地を減らしたい―。卓さんは、多くの人が農業に関心を持つことが必要との思いに至った。

 一方で、麻美さんは自然体験を通した不登校の児童生徒や保護者らの居場所づくりに取り組んできた。今年は農業の楽しさや大変さ、感謝の心を育んでもらおうと、はだしで田植えをするイベントを企画した。

 居場所づくりの取り組みとして、子ども食堂の運営が全国各地で展開されるが、食材確保が共通する課題とされる。そんな中、「子どもたちが生産に携わったコメを通して農業への思いを深めてくれたら」「困っている人が求める選択肢の一つになりたい」―。2人の思いは合致した。

 今回は、学校給食がない冬休み期間に設定し、ひとり親家庭等医療費助成受給資格証の確認ができる世帯を対象に決定。当日は、食を通じた地域貢献活動を展開してきたデリカフェペルチなどの協力を得て、白米1・5キロまたは弁当を無償で手渡す。

 地域を守りたい―との思いを、島守弁の「守(まぶ)る」に掛けて「MARBLE FARM(マーブルファーム)」と名付けて営農する2人。マーブル模様のように社会に溶け込みたいとの願いもある。「この先も目標に向かって一緒に歩んでいく」。初挑戦に向けて心を合わせた。

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 受け取りを希望する場合は、1月3日午後5時までの予約が必要。コメはマーブルファーム=電話080(6049)7172=、弁当はデリカフェペルチ=0178(43)3599=へ。それぞれインスタグラムのDM(ダイレクトメール)でも受け付ける。来店の際は、公共交通機関や近隣駐車場の利用を呼びかけている。

 
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