Free半世紀の歴史に幕 ハマの大衆食堂「食堂あじまさ」閉店 

約半世紀にわたる食堂の歴史に幕を下ろすことを決めた佐々木宏壽さん(左)と大橋むつ子さん
約半世紀にわたる食堂の歴史に幕を下ろすことを決めた佐々木宏壽さん(左)と大橋むつ子さん

1969年に創業した八戸市白銀2丁目の「食堂あじまさ」が28日、設備の老朽化などのため、惜しまれながら閉店した。カレーやラーメン、魚中心の日替わり定食などを、良心的な価格で提供してきた店主佐々木宏壽(ひろし)さん(78)は「50年以上も続き、やり切ったと感じている。食べに来てくれたお客さまに感謝」と感慨深げに振り返る。最終日には“お得意さま”の八戸海上保安部から感謝状と花束が贈られ、ハマの大衆食堂として親しまれてきた半世紀余りの歴史に幕を下ろした。

 食堂を始めたのは、地域の冠婚葬祭で料理を頼まれるほどの腕前だった佐々木さんの母マサさん(故人)。当時、漁業と畑仕事をしていたマサさんだったが、体力的な事情も踏まえて好きな料理を仕事にしようと転身し、家族や親戚も協力して営んできた。店名もマサさんの名前から取ったものだ。

 佐々木さんは都内の大学を卒業後、食堂を手伝うために帰省。本業の漁業の傍ら、地元への配達や調理場を手伝い、食堂をサポートしてきた。「漁業が今よりも盛んだった当時は出前が絶えず、一度にラーメン20食の注文もあった」とかつての活気を懐かしむ。

 マサさんの後は、佐々木さんと妹の大橋むつ子さん(76)が受け継いだ。40年以上にわたり、大橋さんが中心となって店を切り盛りしたが数年前に体調を崩し、現在は山形県に移住。佐々木さんがアルバイトを雇って店を守っていた。

 近隣にある八戸海保には、長年にわたり料理を届けた。弁当のほか、八戸市豊洲の八戸港ポートアイランドに停泊する巡視船しもきたへの出前にも対応。巡視船の乗組員からの要望に応じてメニューにない料理も提供したという。大橋さんは「しもきたの裏メニュー。そういう組み合わせも合うのかと勉強になった」とほほ笑む。

 最終日の休憩時間、八戸海保は佐々木さんと大橋さんに感謝状と花束を贈った。山形から駆け付けた大橋さんは「店を通じていろんな人に出会えた。お客さんの『おいしい』の一言がありがたかった」としみじみと語った。

 
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