Free【体験記・防災に女性目線を】「被害には格差が出る」 衝撃受けた専門家の言葉

多様性を認める社会の重要性を訴える浅野幸子さん=7日、八戸市津波防災センター
多様性を認める社会の重要性を訴える浅野幸子さん=7日、八戸市津波防災センター

【本社報道部・田村祐子】 防災にジェンダーの視点を取り入れる重要性を学ぶ「女性防災リーダー育成プログラム」(一般社団法人男女共同参画地域みらいねっと主催)。7日に開催された第1回研修会は、減災と男女共同参画研修推進センター共同代表の浅野幸子さんが講師を務めた。

 「災害は平等に人を襲うわけではない。経済力や家族構成、性別や年齢、障害の有無、国籍や母語の違いなどいろいろな要素によって被害には格差が出る」

 冒頭から、はっとさせられる言葉の連続だった。当たり前のことのようだが、環境によって生じる問題の困難さを突き付けられた思いがした。

 浅野さんは続けた。「逆に言えば社会が持っている格差や差別、権利意識や社会保障を織り込まなければ、防災政策や復興はきちんと考えられない」。多様性を認められる地域社会にならなければ、いくらハード対策をしても地域を持続可能な形で維持することは難しいと訴えた。

 確かに東日本大震災後、大きな堤防や立派な防災施設が整備されても若者が都会に流出し、人口が激減している地域は少なくない。防災を考えることは、地域の将来像を考えることとイコールなのだ。

 話題は被災の実態に移る。東日本大震災では、体調の悪化やストレスなどを原因とする災害関連死が約3800人に上った。復興庁の報告(2012年)によると、関連死の約半数が「避難所などでの生活の肉体的・精神的疲労」によるもので、避難所生活で心身の健康と安全が保障されることの重要性が理解できた。

 過去には、避難所で女性や子どもが性暴力やハラスメント被害に遭ったり、女性用品が不足しても男性支援者に言い出せなかったりする問題が生じた。プライバシーが確保できず、障害者や乳幼児を抱える家族が避難所で暮らせなくなった例もあり、性別や立場による困難が顕在化した。

 一方で、避難所運営に関わる責任者は大半が男性で、育児や介護などの経験や知識が反映されにくい状況。一部の男性に過度の負担が集中し、女性は炊き出しに長期間従事する、といった固定的な性別役割分担意識も浮き彫りとなった。

 浅野さんは問題解消に向けたヒントとして「女性も多様な経歴や能力を持つことを社会が理解し、決めつけないことが大切」と提案する。

 災害時に困っている隣人に、手を差し延べることができるかどうか。それは私たちが日常を送る社会の在り方が大きく関わっているようだ。

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 災害時に誰もが安心して避難生活を送るため、性別や立場の違いを超え、どんなことが必要なのか。研修を受講した記者が体験を伝える。※随時掲載

 
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