Free【藤井フミヤ展】㊤技法・画材  「アートのアトラクション」

「LIFE」(2001年)©FFM2024

ミュージシャン藤井フミヤさんは画家としての顔も併せ持ち、独自のアート世界を築いている。その作品の特徴の一つに、技法や画材の多彩さがある。キャリア初期から手がけているCGアートに、近年本格的に取り組み始めた油彩画や水彩画。さらには、ボールペンや色鉛筆、木材、ワイヤ、ファンシーショップで売っていそうなシールまで。本展にも、遊び心あふれるさまざまな作品がお目見えしている。

 自身の作風を藤井さんは「アートのアトラクション」と表現する。モチーフが比較的明確であることも手伝って、年代や性別を問わず楽しめるエンターテインメント性の高い作品は、本業のミュージシャン活動にも通底していると分析する。「楽しく見てほしいという気持ちが強く、それはポップスに近い」

 しかし、音楽とアートの制作アプローチは別物だ。音楽の場合、リスナーの存在を強く意識し「まずは聴いてもらう」ことを念頭に曲作りに臨む。一方、アート活動にはこうした気構えはない。ビジネスとは無縁で、ひたすら自由に、描きたいものを描くのだという。

 美術は独学で、技術や知識の面ではジレンマを感じることもあるというが、だからこそ、表現に対しては常に柔軟で貪欲だ。日頃からアンテナを立て、“面白いもの”を探している。

 今回出展している「LIFE」(2001年)は、さまざまな形のフリーアイコンをスタンプのように重ねて制作したCGアート。当時はまだ珍しかったフリーアイコンを使って、何か表現できないかと思案して生まれた。

「錆びゆく裸婦Ⅰ」(2019年)©FFM2024

「錆さびゆく裸婦」シリーズ(19、21年)も、ふとしたひらめきから出来上がった作品だ。制作のきっかけとなったのは、公園を歩いていた時に見つけた針金。さびて絡まった様子が素描の裸婦画のように思えたことにインスピレーションを受け、女性の姿をワイヤアートで表現した。

 藤井さんが多種多様な技法や画材を使って試行錯誤を重ねるのは、アート表現におけるオリジナリティーを確立したいという思いがあるから。「誰が見ても完全に『藤井フミヤだ』という極致には行き着いていないと思っている。だからそれを探している」

 大型の油彩画など、これから挑戦したいことも多く、インスピレーションの源泉は尽きない。“Fumiyart”の進化はまだまだ止まりそうにない。

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 八戸市美術館で開催中の「藤井フミヤ展 Fumiyart2024」(デーリー東北新聞社主催、3月25日まで)。本連載では、さまざまな切り口から藤井さんの作品世界の魅力に迫る。

 
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