Free【行路】ハンディある人が使いやすい衣類や靴を 縫製業の桑原さん(八戸)
八戸市の桑原圭子さん(53)が手がける靴や衣類の多くはオーダーメード。身に着ける人の体に合うように、心を込めてミシンに向かう。
縫製を仕事にするきっかけは、23歳になるまな娘の存在だ。
1995年に結婚し、2000年には次女のあいさんが誕生。しかし翌年、難病を起因とする脳梗塞によって、あいさんは肢体が不自由になった。
外出する際は、しっかりと体を固定するバギータイプの車いすを使用する。08年冬のある日、娘のか細い脚が目に入った。膝から下が寒そうだった。「暖かくしてあげたい」。装具を着けたままでも履きやすいブーツを作り始めた。
小さい頃から手先が器用で、洋服作りが好きだった。脱着しやすいように、かかとの部分に長いファスナーを取り付け、裏地は保温に優れたボア。歩行用ではないが、女の子らしくおしゃれを楽しめるよう、デザインにもこだわった。
あいさんの成長は喜び。一方、大きくなるにつれて「着る物や身に着ける物に不便さを感じた」。手足を通しやすいよう、衣類にゆとりを持たせたり、スナップボタンを取り付けたり。既製品にない工夫を施し、一つ一つ解消していった。
「ハンディがある方たちの力になれれば」。10年に「Aibrand(アイブランド)」を設立し、個人事業主となった。名称の由来はもちろん、あいさんだ。体が不自由でも使いやすい服や靴を提供する。
縫製業とはいえ、手広く生産する訳ではない。自身と同じような悩みを抱える人たちの要望を聞き、身に着けるものを通じて生活を後押しする。
これまで数多くの苦労があった。それでも、ちょっとした工夫で解決できる問題もあると実感している。10月6、7日は八戸市総合福祉会館で作品展を開く。当事者や医療関係者など、さまざまな立場の人に「誰かのことを思い浮かべながら、何かを感じてほしい」と呼びかける。
「あいちゃんの存在がなければ、ブーツを作ることもなかった。あいちゃんさまさまです」。9月の誕生日には、新しい黒いブーツをプレゼントした。
「その人を思いながら作るのは楽しい。私にできることがあれば、手助けしていきたい」。誰もが快適な生活を送れるよう、“愛”を形にしていく。