Free(40・完)企業のSDGs意識 稗田敏雄・帝国データバンク八戸支店長
「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けた取り組みが加速している。自治体や民間企業がSDGsに関する資金調達のために発行する「SDGs債」の国内発行額は2022年度に過去最高を記録し、青森県でもNPO法人や地域金融機関の活動も手伝って、SDGs取組宣言をした事業者の登録数は今年1月の26件から、6月には92件へ増加した。
帝国データバンクが23年6月に実施したアンケート調査「SDGsに関する東北6県企業の見解について」で、青森県は積極的な企業が62・6%と東北6県の中で1番高く、全国でも7位であった。
東北6県では青森、岩手の順で積極的な企業の割合が高く、中小企業でも積極的な企業は5割を超えた。その7割弱は取り組みに対する効果を実感しており、「企業イメージの向上」「従業員モチベーションの向上」など、非財務面での企業価値の向上に関する効果が上位であった。
一方で、特に中小企業からは「どのように対応すれば良いかわからない」「人材面・費用面での余裕がない」といった声も聞かれた。
以下、集計結果を具体的にみていきたい。
積極的な企業が東北でトップだった青森県内からは「CO2削減は当然の事業活動」「国などの助成金や補助金の情報が多く、互いに紹介している」との声があった一方、「SDGsの趣旨や意義は理解しているが、実行する資金がない」といった資金面で余裕がないとする声も聞かれた。
東北全体を規模別にみると、大企業では積極的が69・3%、中小企業は52・4%と中小企業も5割超えとなり、SDGsに取り組む姿勢は広まっている。また、業界別では金融が85・7%で最も高く、次いで製造61・5%、農・林・水産60・0%、建設55・7%となった。
SDGs17分野の目標の中で、力を入れているのは働き方改革や労働者の能力向上などを含む「働きがいも経済成長も」が、青森県で38・8%、東北6県全体でも33・0%と、それぞれ最も高かった(複数回答、以下同)。
青森県では「住み続けられるまちづくりを」30・0%、リサイクル活動やエコ商品の生産・使用などを含む「つくる責任つかう責任」26・3%と続き、東北全体の傾向と大きく変わらなかった。
いずれかの分野に力を入れている企業は東北全体で70・0%となり、SDGsに「取り組んでいない」「理解していない」「言葉も知らない」と回答した企業でも、実際は何らかの形でSDGsに寄与している状況が示されたと言える。
効果を感じるトップは「企業イメージの向上」(複数回答、以下同)で、「従業員のモチベーションの向上」が続いた。また、「売り上げの増加」「新規事業立ち上げ、新商品・サービス開発」につながった企業もあり、社会課題解決と企業の成長は両立できることを示した事例も出ている。
SDGsへの取り組みは企業価値向上やビジネスチャンスの獲得、業績の改善にも結びつくようだ。