Free(39)コンプライアンス違反 齋藤成明・東京商工リサーチ八戸支店長
最近、ジャニーズ事務所の性加害問題が騒がれているが、その中で複数の大手企業から同事務所所属タレントを起用した広告を取りやめるとの発表がなされている。海外でも事件が報道される中、国際的な取引を行っている企業にとって、コンプライアンス(法令順守)違反への対応は、優先順位の高い問題であると言える。
コンプライアンス違反が絡んだ問題でもう一つ話題となったのが、保険金の不正請求事件などさまざまな問題が発覚したビッグモーター。金融機関に借入金の借り換えを断られたと報道された。問題発覚以降、客離れから売り上げが大幅に落ち込んで経営に多大な影響が生じ、企業として存続できるかどうかにまで及んでいる。
コンプライアンスに絡んだ問題は別に新しい話ではなく、古くは山一証券や東芝など名だたる大手企業がコンプライアンス違反を要因に企業存続の道を絶たれたり、存続の淵に立たされたりしている。
コンプライアンスというキーワード自体は聞き慣れたものとなったが、これは決して大手企業だけの問題ではない。
例えば、「産業廃棄物を不法投棄したことで刑事事件となり、有罪判決を受け事業許可が取り消しとなった」「児童に対するわいせつ行為で代表者が逮捕、有罪判決を受け事業継続が困難となった」などは、青森県内の中小企業で発生した事例である。
記憶に新しいところでは「前代表者が反社会的勢力に関わる人物から無許可で労働者を受け入れたことが発覚。急きょ、代表者が交代し、反社会的勢力との取引は組織的なものではないとしたものの、取引先の撤退から経営破たんに追い込まれた」という企業があった。
ここまで深刻なコンプライアンス違反が引き起こされることはまれであろうが、特定の業種に対して適用される法規制や、法律の改正によって新たに適用となった規制などを正しく理解していなければ、知らないうちにコンプライアンス違反をしていたということも起こりうる。
今後、2024年問題と言われる時間外労働規制強化への対応が必要となる業種もあり、人手不足から難しい対応を迫られる可能性も考えられる。まだまだ認識に乏しい企業も多く、「知らないうちに…」とならないように、さらなる周知も必要であろう。