Free(37)魅力あふれる青森県 武藤一郎・日本銀行青森支店長

行ってみたい旅行先ランキング(上)と都道府県魅力度ランキング
行ってみたい旅行先ランキング(上)と都道府県魅力度ランキング

今夏は青森ではまれな猛暑が続いたが、その中でも、8月上旬に県内各地で開催された、4年ぶりに行動制限のないフルスペックの夏祭りは、当方が赴任して以来、青森の地が最も熱く燃え盛った瞬間であった。当方は青森ねぶた祭の審査員を務めたが、一つ一つのねぶたの表情や色彩に込められたねぶた師の熱い思いに感動し、青森本来のねぶた祭を開催できることへの囃子(はやし)方や跳人(はねと)の喜びを強く感じることができた。最終日には自分も家族とともに跳人として参加し、感無量であった。

 言うまでもなく、青森の夏祭りは全国から高い人気がある。JTBは全国旅行者の「行ってみたい旅行先」を旅行タイプ別に調査しているが、『祭・イベント』の部門では、青森県が他地域を大きく引き離して1位となっている(図表1)。青森の夏祭りは全国の旅行者から圧倒的な支持を得ており、今夏に本来の姿で復活を遂げたことは、県民だけでなく全国の人々にとって待望の出来事であったと言える。

 ただ、青森県の持つ魅力は、夏祭りに限らない。春には弘前をはじめ県内各地で咲き誇る桜、秋には八甲田山などで見られる美しい紅葉、冬には美しい純白の雪で囲まれた温泉など、四季の明瞭な変化を堪能できるのは青森の醍醐味(だいごみ)である。県産品も、リンゴをはじめみずみずしい果物や、魚介類などの素晴らしい食材と日本酒を、年間を通じて楽しむことができる。

 こうした年間を通じた青森県の魅力は、全国の人々からも認知されている。ブランド総合研究所は「都道府県の魅力度」に関する調査を実施している(図表2)。全国の人々を回答者とする結果を見ると、青森県の魅力度は47都道府県中19位に位置する。全国的に上位とまでは言えないものの、真ん中より上に位置し、比較的魅力のある県だと評価されている。

 もっとも、この調査では別途、各都道府県に住む住民自身を回答者とする魅力度も公表されている。それによると、住民による回答では、青森県の魅力度は38位と、全国の人々の回答よりもかなり低めである。この魅力度に関する認識ギャップの大きさは、当県の一つの特徴となっている。

 県外から相応の人気があるにも関わらず、県民自身の評価が必ずしも高くない理由には、例えば冬の豪雪の煩わしさなど、さまざまなものが考えられる。しかし、大きな背景の一つは、やはり県内に住む人々の経済的な状況にあるのではないか。

 本連載でこれまでも述べてきたように、青森県は全国と比べて労働生産性が低く、そのことを背景に、他地域との所得格差が大きい。このことが居住者が十分に豊かさを実感できず、若者など労働者が県外に流出する原因にもなっている。

 全国の人々から評価されている通り、青森県の魅力は確実に存在する。ただ、その魅力を維持しているのは、他でもない青森県民である。県民が豊かになるために本当に必要な施策は何か。青森県の魅力を守るために、当方も微力ながら、今後とも真剣に考え、議論していきたい。

 
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