Free(36)相次ぐ自然災害 佐藤雅裕・青森財務事務所長
わが国では、近年大規模な自然災害が相次いでおり、青森県内でもここ数年、大雨により、大きな被害が発生している。今年7月も深浦町を中心に大雨が降り、道路、河川などの公共土木施設のほか、農林漁業関係にも大きな被害が発生した。また、昨年の西北・東青地域、一昨年の下北・上北地域などでも大雨で大きな被害が発生しており、地域住民の生活や地域経済に大きな影響が出ている。
公共土木施設などの被害については、行政が公表する被害額として把握しやすいが、数値化されていない部分でも産業、観光、日常生活への影響は計り知れない。
一昨年の大雨で被災した風間浦村の下風呂温泉では、周囲の道路が寸断され地域住民や観光客が一時的に孤立したほか、復旧にも長期間を要し地域住民の生活に多大な影響が出たことは記憶に新しい。
また、企業へのヒアリングでも「大雨により来店客数が減少した」(小売業)「大雨の影響でレジャー用品や園芸用品の需要が減少した」(同)「大雨の影響で出荷が滞っている」(製造業)などの声が多数聞かれており、経済活動の各方面に影響が及んでいることが分かる。
被災した公共土木施設などで、被害額が一定以上となった被災箇所は、基本的に国庫負担と被災自治体の負担により復旧される。青森県内において国庫負担の対象となった復旧事業費総額は2020年に3・7億円であったが、21年は17億円、22年は172億円とここ数年で大幅に増加しており、それに伴い被災自治体の費用負担も増加していると思われる。
被災自治体の負担分は、基本的に災害復旧事業債(地方債)を発行して復旧費用に充て、借金の償還相当額は大部分が国からの地方交付税で措置されるものの、多少なりとも被災自治体の財政に影響を及ぼす。条件によって異なってくるが、代表的な事例では復旧事業費のうち、国庫負担分(66・7%)と起債の地方交付税措置分(31・6%)を除いた1・7%が復旧事業費の自治体負担分となる。
わずか1・7%と思うかもしれないが、財政規模が小さい自治体にとっては相応の負担となるほか、大規模災害で復旧事業費が多額となり、被災後一時的に資金繰りが悪化したという事例もある。自治体として本来できたはずの、住民サービスの充実や地元の産業振興策、経済活性化策などが後手に回ることにより、地域経済に影響を及ぼしてしまう恐れもある。
近年では、自然災害発生後に長期・マクロ的な視点で見ると、復興需要やインフラなどの更新により経済が成長するという研究結果もあるようだ。
しかし、それは結果論にすぎず、自然災害が発生しても、人的・物的被害を最小限にとどめ、経済活動を継続していくことが大前提で、そのためには自然災害への備えが重要となってくる。
この点について、青森県は17年に県国土強靱(きょうじん)化地域計画を策定し、昨年には新たな5カ年計画として見直しをしている。自然災害による人的・物的被害や経済活動への影響を最小限にとどめるために、ハード面、ソフト面の着実な整備を期待したい。
また、東北財務局では自然災害が発生した際の対応として、国が負担する災害復旧事業費を決定する調査や、被災自治体への災害関連融資のほか、金融機関への金融上の措置の要請、未利用国有地などの無償提供などを行っている。
有事の際は、地域の皆さまの生活環境の安定が図られるよう、そして地域経済への影響を最小限にとどめるよう迅速な対応に努めてまいりたい。