Free(23)減少する労働力人口 佐藤雅裕・青森財務事務所長

従業員数判断BSIの推移
従業員数判断BSIの推移

地方の人口減少が叫ばれるようになって久しい。青森県の人口減少率(2011~21年)は10・4%で、秋田県(12・1%)に次いで全国2位である。それと共に労働力人口も大きく減少しており、青森県内の労働力人口は、15年から20年の5年間で約2万人も減少している。また、労働力人口の高齢化も進んでおり、15歳から64歳まではほぼすべての年齢層で減少している一方で、65歳以上は約1万人増加している。

 このような中、長かったコロナ禍も落ち着き、人流の回復により県内の消費活動は活況を呈している。弘前さくらまつりは大きくにぎわったほか、今年の県内の夏祭りは通常開催が予定されている。また、青森港や八戸港のクルーズ船もコロナ禍前以上の水準で寄港が予定されており、インバウンド(訪日客)などによる経済効果も大いに期待されるところである。小売業や宿泊・飲食サービス業などにとっては、絶好のビジネスチャンスの到来であるが、ここに来て人材確保が喫緊の課題となっている。

 青森財務事務所が実施している法人企業景気予測調査では、企業の従業員の過不足について「従業員数判断BSI」という指数で発表している。 この指数は、従業員が不足気味と回答した企業の構成比から、過剰気味と回答した企業の構成比を引いたもので、プラスの値が大きいほど人手不足感が強まっていることを表すが、昨年12月末の36・8(全産業)は過去最高の値であった。

 また、直近調査の3月末は32・6となったほか、6月末29・2、9月末31・5と今後も高水準で推移する見通しであり、人手不足の解消は容易ではないとみている県内企業が多いようだ。県内の労働力人口が減少の一途をたどっている中、企業には人材確保や労働生産性向上のための取り組みが求められる。

 この点に関し、県内企業の取り組みをご紹介したい。八戸市に本社を置き、東北地方でホームセンター事業を展開しているサンデーは、事業拡大に向け、デジタルや店舗開発などの専門分野における幅広い知見や資格を有する人材の不足が課題であった。また、労働力人口の減少が大きい郡部エリア店舗での採用が困難な傾向にあるという課題も抱えていた。

 そこで、「人材こそが最大の経営資源である」という経営者の思いの下、(1)優秀な人材の確保(2)既存従業員の満足度向上(3)物価高を受けた従業員の生活の下支え―の実現に向けた労使共通の意思で早期の賃上げを決定している。

 23年度の春闘では、UAゼンセン加盟労組の約2200組合の中で全国最速の2月に妥結し、正社員6・2%、パート7・0%の賃上げを実施した。

 来春の就職活動が本格化する前の早期賃上げ表明は、優秀な人材の確保にもつながっている。賃上げによる人件費の増加には、配送ルートや配送回数の見直し、セルフレジの導入などによるコスト削減や労働生産性の向上で対応していくとしている。

 青森県では今後も労働力人口の減少や高齢化の進展が予想され、県内企業は限りある労働力で効率的に事業を進めていかなければならないであろう。各企業の創意工夫により、人材確保や労働生産性の向上を図り、アフターコロナのビジネスチャンスを生かしていくことにより、県内経済がより活性化していくことを期待したい。

 
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