Free(22)人手不足 齋藤成明・東京商工リサーチ八戸支店長

正社員の過不足状況(左)と、2023年度の賃上げ実施予定
正社員の過不足状況(左)と、2023年度の賃上げ実施予定

新型コロナ対策でマスク着用が3月より個人の判断となったほか、5月からは感染症法上の位置づけが5類へ移行する予定で、経済の正常化に向けた動きが進んでいる。青森県内においても、「弘前さくらまつり」の人出が開始2日間で昨年の開催期間中の人出を上回るなど活況を呈している。コロナ禍で開催規模を縮小してきた「八戸三社大祭」も、今年は通常開催が決定されることが決まり、明るい話題が増えてきた。

 コロナ禍の中で多くの企業が厳しい経営を強いられてきた。このため従業員の採用には消極的な状況もみられたが、県内2月の有効求人倍率は1・18倍となり、2022年2月の1・13倍、21年2月の0・95倍と比較してみると回復基調をたどっていることが分かる。経済正常化に向けた動きが現れていると言えるが、そのような中で表面化しているのが人手不足である。

 東京商工リサーチによる4月の調査では、「正社員が不足している」と回答した企業の割合は66・5%と、3分の2の企業が不足感を訴えている。中でも運輸関係は、残業規制の強化でドライバーが足りなくなる「2024年問題」への対応を迫られているほか、コロナ禍で人員を減らした飲食、宿泊関係での不足感が強い。地場の企業からも求人を行っているが、応募がないという話が業種や規模を問わず聞こえてくる。

 これに対する企業側の動きとして出てきているのが賃上げだ。値上げが続く食料品や電気料金など急速な物価上昇への対応を要因とするが、人手確保も要因の一つであり、2月の調査では80・6%に上る企業が賃上げを実施すると回答した。処遇を改善することで従業員の採用に弾みを付けたい考えに加え、求人が計画通りに進まない中では従業員の定着率を高めたいという側面もある。

 このような状況の中で人手不足に関連した倒産が増加基調にある。これは求人難、従業員退職、人件費高騰を原因とする企業倒産を集計したものだが、21年度の件数は52件であったのに対し、22年度は79件へと増加した。前述の通り賃上げを実施すると回答した企業は8割と、全ての企業が賃上げを実施できる訳ではないが、従業員の処遇改善が進まなければ企業間の格差が拡大する要因となりかねないだろう。

 経済がコロナ禍から抜け出し正常化に進む転換点を迎える中、今後は人手を確保できるかどうかという点が、アフターコロナの流れに乗れるかの要因の一つになってくることは間違いない。

 より多くの企業がこの流れに乗り、経済の正常化が進むことが期待される。

 
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