Free【猿楽さん旅音日記】(23)メインテーマ

旅音プロジェクトでは、二戸市の美しい風景を巡りながら数々の曲を作ってきた(楽曲のMVより)
旅音プロジェクトでは、二戸市の美しい風景を巡りながら数々の曲を作ってきた(楽曲のMVより)

二戸市地域おこし協力隊の猿楽さんは、市内の風景や文化を音楽で表現する「旅音プロジェクト」を進めている。音楽家の感性で捉えた二戸の印象を、曲のイメージと共に紹介する。



 にのへの旅音プロジェクトは、馬仙峡の男神岩・女神岩からスタートし、組曲・金田一温泉物語まで22曲を作った。実際にその場所を訪れ、風景や文化に触れながら作り上げた、全編オリジナルの楽曲だ。

 今回はプロジェクトのメインテーマを紹介させていただく。僕が二戸に移住する前に、初めて下見で訪れた時のイメージと、これから始まる音楽の旅に期待を込めて作った曲だ。

 北東北の風景は美しい。そして、僕が出会った人たちは皆、厳しい自然にも負けず凜(りん)としていた。それぞれの気持ちを尊重しながら、支え合って生きている。「豊かさ」の尺度や捉え方は人それぞれだが、僕は二戸に住んだ当初から、「すでに豊かな街だな」という印象を抱いていた。

 また、二戸の人たちと関わりながら、「足るを知る」ことの大切さを改めて感じた。人間はひとたび欲望に取りつかれて満足できなくなると、目の前の幸せには気付かなくなりがちだ。

 見慣れた自然や伝統文化は、当たり前のような存在に思うかもしれないが、実はかけがえのない貴重なものだ。地域の宝を誇りにし、身近な幸せをかみしめることの素晴らしさを、この街は教えてくれた。

 皆さんもぜひ、連載で紹介してきた二戸の各地を訪れてほしい。今回はメインテーマらしく、旅立ちの躍動感にあふれた曲となっている。シンプルなメロディーが転調を重ね、季節の移り変わりのように音色を変えていく。美しい北東北を巡る、旅人の姿をイメージしながら聴いてほしい。

 旅音日記は、次回で最終回となる。初の連載で大変なことも多かったが、何か一つでも皆さんの心に響くものがあればうれしい。

 ※タイトル曲などのミュージックビデオ(MV)は、猿楽さんのサイト「にのへの旅音」で順次公開する。

 
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