Free(18)企業の休廃業・解散 稗田敏雄・帝国データバンク八戸支店長 

青森県の休廃業・解散件数推移
青森県の休廃業・解散件数推移

2022年の青森県内の企業倒産件数(法的整理による)は45件、負債総額は約45億5千万円で、31件だった21年と比較すると、件数は大幅な増加となった。

 一方、休廃業・解散企業(個人事業主を含む)は512件と前年比22・4%(148件)減で、倒産件数(法的整理)比も11・4倍と、前年の21・3倍から大幅に縮小した。

 全国的にも休廃業・解散件数は減少したが、青森県の減少率は、全都道府県の中で最も高く、山梨県15・2%減、山形県13・7%減と続いた(ちなみに増加率上位は滋賀県8・8%増、茨城県8・0%増、宮崎県7・9%増)。

 政府による実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)による資金繰り支援に加え、自治体や商工会議所、外郭団体、信用保証協会といった官・公的機関、銀行、信金を中心とした民間が一体となって支援に取り組んだ結果、休廃業・解散件数が大きく抑制されたのだと思われる。

 ただし、休廃業・解散率(当該年の件数を前年末時点の企業総数で除して算出)は、青森県は2・93%となっており、他県と比べて特筆して低位である状況にはない。

 県内の休廃業・解散企業の中身をみると、業種別トップは「建設業」の102件、旅館・ホテルを含む「サービス業」76件、食品スーパーなど「小売業」54件と続いた。

 当期純利益の黒字、赤字別では、全体の60・5%は直前期に「黒字」、バランスシート上では全体の70・1%は「資産超過」であった。代表者平均年齢も71・8歳で、16年の67・8歳から一段と高齢化が進んでいる(30歳代以下は0%、80代は全体の20・7%)。

 これらのデータをみると、「赤字」や「債務超過」といった収益面、財務面の悪化よりも、経営者の高齢化、後継者難が根底にあり、官民一体の伴走型支援策が充実しつつある中でも、支援の枠から取り残された企業が経営継続を諦め、休廃業・解散を決断したケースが一定数あると考えられる。また、物価高や人手不足などによるコスト増が収益を圧迫したことで、ダメージが広がる前に事業をたたむ決断をした健全企業も増えている。

 県内でも官民一体となった支援策やM&A支援機関などの増加により、後継者難で一時は廃業も視野に入れた公共工事主体のゼネコンを関東の建設会社がM&Aし、今後新たに民間分野の受注増を目指すなど、事業承継がうまく運んだ例もでている。

 しかし、物価高で収益が厳しいままの企業にゼロゼロ融資返済という重荷が加わり、同時に経営者の高齢化や働き手の確保難も待ったなしで進展する。支援の枠から外れ、M&Aの対象にもならないような零細企業を中心に、今後も一定数は休廃業・解散が発生していくのであろう。

 
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