Free(17)事業承継 高坂健二・東京商工リサーチ青森支店長
最近、各種マスコミ媒体でも目にすることが多くなった「事業承継」という言葉。国、そして青森県は喫緊の課題と認識し、さまざまな支援措置などを準備して円滑な事業承継を勧めているが、なかなか浸透していないのが現状である。取り組まなくてはならないのは分かっているが、どうしても後手に回ってしまう、との声が経営者からよく聞かれる。
東京商工リサーチが発表した2023年1月の後継者不在による「後継者難」倒産(負債1千万円以上)は36件で、1月としては2年連続で前年同月を上回り、1月単月としては調査を開始した13年以降、20年に並んで最多を記録した。さらに直近5カ月連続で30件を超えるなど、大きな経営リスクとなっている。
加えて、社長の平均年齢に関しても興味深いデータがある。22年の社長の平均年齢は調査を開始した09年以降で最高の63・02歳(前年62・77歳)となった。また高齢化に伴い、60代以上の社長の構成比が初めて60%を超えた。
社長の年代別企業業績は直近決算で「増収」は30代以下が59・3%と最も高く、一方で70代以上は42・9%と最も低い。社長が高齢化するほど増収率は低下し、「赤字」や「連続赤字」の構成比も他の年代より高い。社長の年齢が上昇するにつれて業績は悪化しているというものだ。
もちろん経営者が高齢であるのが悪いという訳ではない。長年経営者として培った経験、人脈、財力など、これらを存分に利用してまだまだ成長を続けている企業は多い。
一方、時代は常に変化し続けているものであり、経営者にはこの変化を十分に理解し、対応していかなければならない柔軟性が求められる。
最近の若者を示す「Z世代」という言葉がある。定義は曖昧だが、おおむね1990年後半から2010年前半までに生まれた方で、幼少期から既にインターネットが普及し、スマートフォンなどのIT機器が身近な存在にあった世代だ。
この世代は生まれた時から膨大な情報の中で育ってきただけに、それを整理したり、利用したりする能力に長(た)けている。その世代が既に成人となっているのだから、高齢の経営者との間にかなりのギャップが生まれる可能性は高い。ただ、これら特性を経営者が理解し、うまく使いこなせれば、新たなニーズを発掘することも可能であろう。
青森県の社長の平均年齢は63・99歳と全国では9番目に高く、秋田県が1位であるなど、東北地区は全体的に高い傾向にある。事業承継は一朝一夕でできるものではない。また、優良企業であればあるほど株の譲渡が難しく時間を要するケースもある。
企業の存続を考えれば、いずれ来る事業承継に備えて計画的に行動することが重要であると言える。