Free(16)地元を離れる若者へ 松田英嗣・あおもり創生パートナーズ取締役
弥生3月、多くの若者たちが卒業を機にふるさとを後にする季節となった。希望に満ちた若者たちの就職や進学に水を差す気は毛頭ないが、年齢別で青森県からの転出超過が突出して大きいのは、高校と大学の卒業時にあたる18歳と22歳だ。そして、転出した若者の多くは県内に戻らない。
有効求人倍率の1倍超が常態化しても、こうした状況に変化の兆しは見えない。引き留めるつもりはないが、彼らの親世代の一人として考えざるを得ない。ふるさとの魅力を十分に伝えきることができたか、小ぶりでもキラリと光る魅力的な職場があることを伝えきれたか…と。
今回は先輩社会人の一人として、18の春、22の春を迎え、ふるさとを後にして社会人となる若者たちに向け、やや硬い話を二つ贈るとともに、切実なお願い事を一つしたい。
まず一つ、県が公表した「青森県の推計人口」によると、今年1月1日現在の推計人口は、120万464人まで減少した。最近の県人口が毎月千数百人程度コンスタントに減少していることを勘案すると、2月1日現在で120万人を割り込んでいる可能性が非常に高い。
県人口のピークは1983年の約153万人であったことを考えると、この40年間で33万人減少したことになる。33万人といえば、現在の八戸市に十和田市、三沢市を合計した人口規模となる。また、人口規模が縮んでゆくだけにとどまらず、高齢化の進展も早く、労働力や地域の担い手不足が地域の活力をジワジワとそいでいる。そんなピンチに陥っている青森県では、これまで以上に若年層の力を必要としていることを理解してほしい。
次いで、常に新たな学びを続ける必要性についてである。日々私たちが使うパソコンやスマートフォンの能力は、中央演算処理装置(CPU)の性能で決まる。どんな有名メーカーのパソコンであっても、搭載しているCPUの性能が悪ければ、仕事はサクサクとこなせない。
一方、無名メーカーの製品であっても、しっかりしたCPUさえ搭載していれば、最新のソフトウエアやアプリケーションを数多く搭載しても、ストレスなく仕事はすすむ。そして、CPUの高性能化のスピードは速い。
労働の現場でも同様のことが起きている。これから社会人となる皆さんは、数十年の長い期間を職業人として過ごすことになる。その間には、就職した会社や所属する業界が、丸ごとなくなる可能性も否定できない。就いた職種が人工知能やロボットに置き換えられることだってあるかもしれない。一生を同一組織や同一業界には託せない時代になるということだ。
そうした先の見通せない時代に求められる能力は、暗記力や記憶力などではない。自ら課題を発見し、解決への仮説を組み立て、解決に向かう実行力だ。正解が見えない問題に対応する能力が、これからの時代には求められている。常に最新のCPUで考え続けることが必要になるということだ。
最後に、この春、約20年を過ごしたふるさとを後にする若者たちに心からお願いしたい。たとえ遠く離れていても、自分が選んだ道でふるさとの力になれる方法を最新のCPUで考え続けてほしい。
そして、われら大人世代は、彼らがUターンを考えた時に躊躇(ちゅうちょ)なく実行に移せるよう、今より魅力的で元気なふるさとを創るべく邁進(まいしん)することが責務だ。