Free(13)発電所支える地元企業 齋藤成明・東京商工リサーチ八戸支店長
地球温暖化への対応から近年は太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの普及が進められているが、われわれの使用する電力の大半は火力発電などに依存しているのが実情だ。火力発電所のような巨大プラントは安定して電力を作り出すため定期的なメンテナンスを必要としており、これを縁の下で支えているのが北辰工業(八戸市、田島理成社長)である。
同社は1964年の創業以来、一貫して発電所のメンテナンスを主力事業とし、電力インフラの安定に努めてきた。現在では本社および東北地方5カ所と横須賀に設けた営業拠点のほか、本社工場により、東北電力の火力発電所、原子力発電所をはじめとした発電所設備維持を担っている。
発電所はボイラーや発電機、ポンプ、配管などさまざまな設備が結びついた集合体であり、定期的な点検が行われることで、われわれは安心して電気を使用することができている。
中でもタービンは発生した蒸気を受けて発電機を回転させる重要設備であり、タービンブレードの一枚にも破損が許されず、高い技術力により発電設備のトラブルを防いでいる。
また、高速回転するタービンは軸設置に当たって、中心とのズレの許容範囲が1千分の3ミリと極めて高い正確性が要求されており、熟練した技術者の職人技が生かされている。
こうした実績を背景にして、2020年3月に営業運転を開始した東北電力能代火力発電所3号機では、東北地方の企業で初めてメインタービンの設置工事を手がけることとなった。
同社の業務を市民が直接目にする機会はまずない。だが、高い技術力による確かな仕事と、一つ一つの実績の積み重ねにより信頼を得て巨大プラントの維持に貢献し、電力の安定供給に欠かせない存在となっている。
重要な役割を担う同社だが、業界では技術者の高齢化などから、発電所設備のメンテナンスを手がけることができる企業は減少してきているという。
昨年8月に社長へ就任した田島氏は、技術を引き継いで行くための人材育成に力を入れていく考えだ。「社員ファースト」を掲げて働きがいを高めていくほか、女性の活躍できる場を広げていくとしている。
また、創業60周年を迎える24年には八戸駅西口へのトランポリンパーク開設を予定している。本業で携わる発電所と同じく社会インフラという共通点もあり、地域活性化にもつなげていきたいと言う。
業歴ある企業だが、新しいものへのチャレンジ精神は旺盛だ。