Freeよそ者5人が野辺地で新会社 町や県産食材の魅力発信
2022年夏、野辺地町に新会社が立ち上がった。社名は「北前船」。鮮魚加工などを手がけるほか、長期休業していた町の産直施設「のへじ活き活き常夜燈市場」の管理運営も担い、町の魅力発信に一役買う。運営するのは町外出身の5人。社長を務める弘前市出身の佐々木雄大さん(42)は「新型コロナウイルス禍で落ち込む町経済や高齢化が進む1次産業を“よそ者視点”で盛り上げたい」と意気込む。
佐々木さんは、物流会社勤務時に青森県産食材の流通拡大プロジェクトに関わった経験があり、食の魅力発信に可能性を感じて脱サラ。19年から個人事業として食品卸売業を手がけてきた。
仕事で野辺地町に通う中で、使われていなかった産直施設を見て「もったいない」と感じ、施設の活用を見据えて株式会社を設立した。ほかの4人は仕事を通じて知り合った仲間で、県産食材の価値を伝えたいという佐々木さんの思いに賛同した各分野のプロだ。
佐々木さん以外は東京にいながら活動を支える。飲食店経営などの経験を持つ村山拓也さん(33)=栃木県出身=は「地元の人に喜ばれるような、地域に根ざした産直施設にしていきたい」と施設で提供するメニューの考案などを担う。広報担当の横山未歩さん(30)=八戸市出身=は「青森の食のおいしさと生産者の熱い思いを全国に発信できれば」と力を込める。
デジタルマーケティング事業を手がける坂口聡さん(35)=福岡県出身=は、電子商取引(EC)サイトの構築などを担当。小林大亮さん(34)=同=は大手飲料メーカーに勤務しながら、飲食店への商品紹介などを行う。
施設は22年12月13日に再スタートを切った。今後は、多くの人を呼び込むため、各種イベントの開催も予定している。メンバーが持つ海外とのネットワークを生かし、訪日外国人観光客も呼び寄せたい考えだ。
社名にした北前船は、江戸時代中期から明治時代にかけて日本海回りで物流を担った。佐々木さんはモノだけではなく、青森の魅力も伝えられる会社を目指している。「県内食材とともに、地域の観光資源も情報発信していければ」。夢は始まったばかりだ。
【のへじ活き活き常夜燈市場】
2016年10月、野辺地町野辺地の常夜燈公園の隣にオープンした産直施設。町特産品の販売とPRを行い、地域経済の振興につなげる目的で町が整備した。町と町観光協会、町商工会などでつくる「のへじ常夜燈朝市活性化協議会」が運営していたが、新型コロナウイルス感染拡大やホタテの水揚げ減少などで客足が減り、20年11月に休業。再開を目指す町が管理運営者を募集した結果、佐々木雄大さんが社長を務める「北前船」に決まった。施設は22年12月13日に再オープン。