Free(5)県内企業の特異性 徳永博一・帝国データバンク青森支店長

青森県と全国の業種別構成比
青森県と全国の業種別構成比

青森県の人口が減少基調にあることは、さまざまなニュースで取り上げられており、耳にする機会も多い。事実、2022年10月時点の県人口は約120万人と、直近5年間だけみても約7万人も減少している。地方部における人口減少は全国的な問題でもあり、原因の一つである少子化対策をはじめ、さまざま策が練られ実行されている。

 こうした中、多くの人々が生活の糧を得る場となる地域企業についてはどのような状況にあるのか、青森県ならではの特異性はあるのか、帝国データバンク独自のデータを基に特徴を探ってみたいと思う。

 帝国データバンクが業種や売上高などの企業概要を把握できる県内企業数は約1万7千社。まず業種構成をみると、建設業が構成比約3割を占め、中核の産業となっている。これは首都圏を含めて全国各地ともおおむね似通った状況である。「経済対策=公共事業」という公式が成り立つゆえんとも言える。

 一方で他県との違いが目立つのは、製造業や不動産業の構成比が低く、小売業、農業などの割合が高い点だ。とりわけ製造業に関しては、全国平均が約11%なのに対して、青森県は約6%にとどまり、差異が顕著となっている。

 飲食店などを含む小売業の構成比は約16%と、こちらは全国平均の約11%を5ポイントほど上回っている。

 続いて年商規模別をみると、全国と比べて年商規模1億円未満の企業の構成比が高い。都道府県別では全国で4番目に高い構成比となっており、相対的に企業規模の小さな法人が多い状況にある。

 業歴を分析すると、設立10年未満の比較的若い企業が少ない一方、業歴の長い企業は多く、とりわけ業歴30~50年の企業の構成比は全国でも2番目に多い。

 社長の平均年齢が高いといった特徴もあり、21年12月時点における社長の平均年齢は61・9歳と全国で3番目に高く、1990年の53・9歳から年々上昇している。

 以上のような指標を読み解くと、他県と比較して製造業のウエートが低い一方で、小売業が高いことから、より新型コロナウイルスの経済的な負の影響は大きかったことが推察される。

 また相対的に売り上げ規模の小さな企業が多く、成長性といった観点では見劣りするが、長年にわたり第一線で活躍し続ける経営者が多く、地域に根ざした活動によって数十年の長きにわたって事業継続できている企業も比較的多い県と捉えることができる。

 こうした状況を踏まえても、今後地域経済の活性化に向け、農業や観光関連のように県外を主なマーケットとする「域外市場産業」の一段の発展が求められる。やはり、その筆頭で地域経済活性化に直結しやすい製造業(ものづくり産業)の育成、誘致、集積などは必要であろう。

 創業支援や一部の成長意欲のある経営者に対する金融、情報面でのサポートなども大切で、中長期的な視点で特定分野に集中的な資源投下を行うことも重要と言える。

 
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