Free【猿楽の旅音日記】⑪似鳥SUNSET
二戸市の安比川流域にある似鳥地区。県道沿いに「産直ショップあっぴ川」という、素朴なたたずまいのお店がある。この駐車場の辺りから眺めた夕焼けが、今回の曲のテーマだ。決して有名な観光スポットではないが、ここで偶然見た夕日の美しさが、僕の心を一瞬で捉えた。
本題に入る前に、産直について軽く触れてみたい。ここには女性の店主がいて、いつも気さくに接客をしてくれる。今日のお薦めの野菜とか、どんな料理に使えばいいとか、親切に教えてくれる。やり取りをしていると楽しくなり、つい全部買いたくなる。こういう方は地域の宝だと思う。
僕が二戸に移り住んだ2020年秋に、話を戻す。風景や文化をテーマに曲を作るというプロジェクトに取り組むため、まず市内のあちこちを車や徒歩で回り、良さそうなスポットを吟味した。当初は見るもの全てが新鮮で、毎日が発見と感動の連続だった。
そんなある日の夕方。浄法寺地区で散策し、二戸市街に帰る途中だった。車を走らせていると、ふと神々しいような光に包まれた。
急いで車を止め、辺りを眺めた。沈みゆく夕日に、似鳥ののどかな田園風景がキラキラと輝いていた。心から美しいと感じ入り、その場ですぐに曲を作った。
今振り返っても、感動的なほどにきれいな夕日は、この一瞬にしか味わえないものだった。そこに引き寄せられた、自分の心の状態も含めて。風景をテーマに曲を作るのは、そんな魔法のような瞬間を音楽の中に閉じ込めるということだ。
こうして、心の原風景を描いたような、素朴で優しい曲が出来上がった。夕暮れ時に、リラックスした気持ちで聞いてほしい。(猿楽)
※タイトル曲などのミュージックビデオ(MV)は、猿楽さんのサイト「にのへの旅音」で順次公開する。