Free⑥「青森県の貿易概況」 輸出先の多様化進む
青森県内企業は、どの商品群でもうけているのか。自治体や産業団体の長をはじめ、企業幹部らからも毎年よく聞かれる。数字の増減が多くて恐縮だが、この場を借りてお答えしたい。
県内企業からの回答と県内通関の数値を基にした、2021年の「青森県の貿易」を先日公表した。県内で輸出入業務を行っている可能性のある企業約千社に依頼し回答のあった中で、輸出125社、輸入61社、延べ186社が「輸出入の実績あり」と答えた。輸出を中心に前年比20社増で、新たに海外取引を行う事業者が増えたのは心強い。
21年の輸出先上位は1位中国、2位台湾、3位韓国だった。4位パナマ、5位香港を加えた上位5位で、輸出総額の75%を占める。
中国と台湾は前年と同じ順位で、3位は前年の香港から韓国に替わった。前年は3位香港、4位タイ、5位米国を加えた1~5位で、輸出総額の95%を占めていたため、輸出先の多様化が進んだことになる。
「機械・電気機器」を中心に20年に千億円超輸出していた中国向けが、21年はゼロコロナ政策とロックダウン多発が影響してか、3分の1規模で急減。逆に台湾向けが前年の2・7倍(250億円規模)に増え、韓国も10億円から90億円超の輸出大幅増となった。
資源高騰を受けて、原料として再利用できる「金属品」が増えたことなどが主要因だ。20年上位5カ国への主要輸出品目を見ると、中国、タイ、米国で機械・電気機器が多かった。
それが21年には上位3カ国全てで金属品となったのは新しい傾向だ。今年1~8月の県内通関統計を見ても、原料高で再利用できる原料の輸出が増え続けている。
船舶は21年の納品がまだ少なく、輸出額に占める構成比(20年28%→21年12%)は減少したが、輸出先上位4位パナマのほか、7位マーシャルなどの特定国に輸出され始めている。
エネルギー価格の上昇もあり、21年後半から特殊資源運搬船の受注がこれ以上受けられないほど好調のようで、22年から23年にかけて船舶は輸出額を伸ばしていくだろう。
青森県からの輸出総額の71・6%が工業生産品で、農林水産・食品は22・8%。リンゴの最大の輸出先台湾で春節(旧正月)需要が高いのは知られているが、23年の春節は暦の関係で1月に早まるため、22年内の輸出が多くなる。22年通年で見ると春節需要2回分となり、輸出もそれに伴って増える見込みだ。
リンゴだけに焦点を当てて輸出の推移を見る場合には暦年値ではなく、県りんご果樹課発表の輸出値を引用すると、春節の暦に影響なく、収穫期ごとに増減を比較できる。
春節や中秋節の贈答需要と輸出先への依存度を知らない県外の輸出・農業関係者は要因分析を間違えることも多いが、青森県民であれば、リンゴに関わる輸出統計の留意点は知っておきたい。