Free天国へ“龍”が届けた全勝V 大成龍(八戸出身)亡き恩師への思い
25日に千秋楽を迎えた大相撲秋場所。13日目の23日に幕下で初優勝を果たした八戸市出身の大成龍(29)=木瀬部屋、本名・笹山喜悌(よしとも)=は、特別な思いで今場所に臨んでいた。しこ名を改名し、ちょうど1年。昨年末には幼い頃から相撲のいろはをたたき込んでくれた恩師が死去した。30歳を目前にして勝負の場所が続く中、「結果で恩返ししたい」と押し相撲を貫き、全勝Vを天国に届けた。
小学1年生で相撲を始めた大成龍。当時通っていた道場で教えていたのが元高校教諭の平川信和さん=享年(51)=だった。大成龍は市立湊中を卒業後、平川さんが教べんを執っていた青森県立八戸水産高に進学し、高校でも薫陶を受けた。
練習後に家まで送ってくれたり、軽食をごちそうしてくれたりと、「息子のように接してくれた」(大成龍)。元幕下力士の兄数馬さんや大成龍の角界入りを後押ししたのも平川さんだった。
大成龍は2011年の技量審査場所で初土俵を踏み、順調に出世。17年秋場所には十両に昇進した。だが、その後は苦戦が続き、十両から幕下への陥落を2度経験。昨年秋場所には東幕下57枚目まで番付を下げる屈辱も味わった。
苦悩の中、木瀬親方から提案されたのが、「大成道」からのしこ名の改名だった。昇り龍のように駆け上がってほしい―との願いを込められたしこ名は、「名前に恥じないよう相撲を取らなければ、と奮起する材料になった」。大成龍で土俵に上がってからは3場所連続で勝ち越した。
そんな中、昨年12月に平川さんの訃報に接した。「どうにか結果で恩返ししなければ」。7月の名古屋場所でも勝ち越し、迎えた今場所は初日から得意の押し相撲に加え、組んでからの四つ相撲でも強さを発揮。「亡くなってからも、どこか平川先生から力を頂いていたのかな」としみじみと振り返った。
自身初の優勝だが、おごりは一切ない。「平川先生なら、『これからが大事だぞ』と言ってくれるはず。浮かれてはいられない」
亡き恩師への思いを胸に、3度目の十両昇進へ勝負となる11月の九州場所に臨む。
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