Free⑤「販路開拓」 商品で売り込み先に違い
新型コロナウイルスが流行する以前の販路開拓は、海外主要市場における販促フェアを通じて、売りたいモノを量販小売店などで直接消費者に試飲食してもらい、定番化を図るのが主流だった。
当然ながらバイヤーは売り上げと利益率を考慮する。飲食品の場合には販売棚に定番を残しつつ、一般消費者に目新しさをアピールしたい思惑もあり、通常年間取扱商品数の1~2割程度は新しいラインアップがほしいようだ。まずは既存商品や他競合との比較で、優位に立てるかを突き詰めながらも、消費者・バイヤー目線で少し客観的に自社製品を見てほしい。
コロナ前は産地視察で材料・製造方法を見て、商品の質や高価格の理由を納得してもらいやすかった。だが、全国一律で商品データを並べてバイヤーが候補商品を絞りオンライン商談を行う昨今のやり方は、スケールメリットが働きやすい都市圏の大企業商品が選ばれやすい。都市圏への物流コストも加算される少量高額品については、なじみが薄い消費者に、既存商品と差別化した一層の付加価値を理解してもらうことが大事だろう。
売り込み先については表を参照願いたい。業務用と一般消費者用などでも違いがある。取引先となるバイヤーの与信管理や決済方法も考慮が必要だ。注文書のやり取りのみならず、契約書や保険なども国内取引以上に慎重に行ってほしい。
バイヤーに商品を気に入ってもらい、販売取引先としての与信がクリアできれば、商品登録となるが、当該市場へ参入するプロセスとして、相手国地域の規制・表示・商慣習への対応などが必要だ。
自社で外国企業と直接取引する「直接輸出」は労力を自社内でかけられるなら、そのノウハウが財産として自社に残るメリットがある。万単位の商品を抱える商社などを介した「間接輸出」を行っても、商社だけに営業や販路開拓を任せるのはそもそも限界がある。
オンライン化が進み、遠隔地とパソコンを介したやり取りがしやすくなった。地方(青森県)にいながら海外取引ができる若い世代が将来的な事業承継も兼ねて輸出ノウハウを身に付けつつ、地域・企業の活性化を担ってほしい。
ただ、ハードルの低い間接輸出で始めるのであれば、言語・為替その他のリスクへの対処が不要となり、海外取引の煩わしさからは解放される。参入先市場への定期便がある商社が、混載で扱ってくれると少量でも価格が折り合いやすく、またその商社による買い取りであれば、在庫で悩むこともなく、国内取引同様で輸出を始められる。
輸出が国内取引と大きく違う点は(1)相手が違う国にいる(2)相手との距離が離れている―点だ。違う国地域だからこそ、準備と手続きが欠かせない。国内価格より大幅に高い価格で海外販売が可能だったり、国内売り上げ低迷などのリスクを分散したりする上でも、輸出の取り組みが将来に向けた布石になり得る。
※第6回は10月2日公開の予定です。