Free【番外編・輸出の流れ】㊥「親近感」も判断材料
輸出の流れを理解して、輸出先候補を絞ると同時に、規制も調べていく。国地域別マーケティング情報に加えて、国地域の農水産食品の輸出品目群ごとの規制・関税・手続きは「日本からの輸出に関する制度―農林水産食品別に見る」(https://www.jetro.go.jp/industry/foods/exportguide/country/)に、品目群や国地域ごとに記載されているので、クリアできるか確認する。各ページの上部にある規制・関税・手続きと記載されている青い項目をクリックすると参照できる。
工業品であれば、安全保障上の観点で貿易管理対象の技術素材等の輸出はできない。農水産食品であれば、政府間合意に基づいた検疫上の証明が必要となる。青果など輸出相手が定める検疫は、植物検疫所の一覧(e_hayami_kamotu.pdf)で確認する。植物検疫のほかに、残留農薬・産地証明書要否なども要確認だ。
輸出先を絞り、規制・手続きがクリアできれば、現地の嗜好(しこう)や最新トレンドを情報収集しながら、自社商品に合った商流・取引先候補(プレーヤー)を深掘りしていく。既にお付き合いしている日本国内の取引先が、輸出関心先への商流がある場合もある。
海外視察する際には、ジェトロの海外事務所で無料のブリーフィングを受けられる(希望日の2週間前をめどにウェブで要申し込み)。
「海外ブリーフィングサービス」(https://www.jetro.go.jp/services/briefing/)
新型コロナウイルス禍で、従来より海外往来がしづらくなっていることもあり、ジェトロが毎週発信している動画で、参考になる国地域・商品群・テーマがあれば、参照いただくのも一案だ。
「国際ビジネス情報番組『世界は今―JETRO Global Eye』」(https://www.jetro.go.jp/tv/)
輸出先を絞って規制面でクリアできる国地域が分かったところで、その先のどこへ輸出するかの判断は、実は取引先とのご縁や「親近感」に表される点が案外多い。
台湾は青森県産リンゴ最大の輸出先であり、(人口が台湾の約3倍ある)ベトナムと比べても、日本からの農産品輸出額は2倍。在留邦人数が2万人余で同規模の台湾、ベトナム、マレーシアを輸出先として比較すると、台湾は日本食レストラン数もベトナム、マレーシアより格段に多く、物理的な距離だけではない「親近感」を感じる。
青森での勤務が5年近くとなり、東北地域や青森から見た各主要市場への「親近感」が関東圏以西とは大きな違いがあることを実感した。
工業品は中国や米国への輸出が多いものの、農水産食品は、地元から見て親近感が強い、台湾や香港、ベトナム、タイといった市場をまずは検討される輸出企業が多い。新型コロナ感染拡大前は、中国や韓国からインバウンド客が多かった首都圏以西とは違い、青森を含む東北地域は台湾からの訪問客も多い。台湾(人口約2千万人)と香港(同約700万人)には、「人口=市場」として見た以上の影響力がある。