Free【番外編・輸出の流れ】㊤ターゲットを定める

※文末に拡大図

輸出が国内取引と大きく違う点は、❶相手が違う国にいる❷相手との距離が離れている―点だ。時間も距離も日本と違うのは、海外取引を進めるにしたがって実感する。

 ❶については、違う国地域だからこそ、例えば海外主要国地域との物価の内外格差が拡大している現状下では、日本国内価格より大幅に高い価格で販売が可能だ。国内売り上げ低迷などのリスクを分散する上でも、輸出が将来への布石になり得る旨は、新聞連載の「⑤販路開拓」でお伝えした。

 ❷については、相手に届ける輸送経路が複雑で、その分リスクも発生する。国内よりも移動距離が長くなるため、コストのみならず、物流の事故・損害のリスクがある。L/C(信用状)開設や保険契約締結、決済方法の選択なども、お金とモノが同時に交換されない距離があるが故の手続きだ。

 「輸出したいんだけど、どこから始めたら良い?」と青森県内企業によく聞かれる。お勧めするのは、お金とモノの動きを体系的に学べるジェトロの「貿易実務オンライン講座」(https://www.jetro.go.jp/elearning/)=だ。

 県内各社の輸出入担当者が交代・着任された後に、実務講座をよくご利用いただいている。

 輸出の流れは、以下の通りだ。
1.輸出先を調べて絞る
2.規制を確認する
3.商談→見積もり→受注
4.書類(原産地証明・送り状・請求書・B/L・その他必要書類)
5.保険(海外PL保険)
6.決済(海外送金、L/C、支払時期交渉)
 ※B/L=船荷証券

 まずは、輸出先を調べてターゲットを定めることから始める。調べるのは国地域ごとの概要(人口、経済成長率、物価、当該品目群の消費動向、日本からの輸出推移、競合品および価格)だ。

 ジェトロの海外55カ国76事務所を通じて、海外ビジネス動向を国地域別・産業(品目群)別・目的別にまとめているので、そちらで参入先国地域の概要をつかむことができる。

「国・地域別に見る」(https://www.jetro.go.jp/world/)
「目的別に見る」(https://www.jetro.go.jp/theme/)

 海外への農水産食品輸出であれば、こちらが見やすい。
「海外マーケティング基礎情報―農林水産物・食品」(https://www.jetro.go.jp/industry/foods/marketing/)

 市場として自社製品との親和性、市場内独自性などを地域特性や購買層、宗教などとかけ合わせて可能性を検討する。輸出関連諸経費も含めて現地市場販売価格が高額になるため、例えば日本産飲食品のターゲットとして、かつては高所得者層への売れ筋を調べる傾向が強かったが、現在は日本の物価や円安が反映されて、海外から見ると、現地資本系の商流にも参入しやすい状況になってきている。海外競合品や価格も参照し、イメージをつかんでおく。
「品目別現地市場価格調査」(https://www.jetro.go.jp/industry/foods/marketing/price_com.html)

 これらの情報源を基に、ターゲットの国地域候補が挙げられる段階になれば、自社製品情報とともに、ジェトロ青森に、海外事務所へのEメール相談依頼を出すなどして、代表的な商品ごとに市場性を調べる。

 現地視察ができる場合には、ウェブで得られた情報に立体感を持たせるためにも、足を運ぶことをお勧めする。現場から直接情報を得ることで、市場を理解する以外にも、バイヤーになり得る輸入・卸・小売り・外食産業事情をより深く理解でき、販路構築に役立つからだ。ジェトロや県・市などが実施している視察・海外展示商談会も足がかりになるのではないか。


 
お気に入り登録