Free③「農林水産物」 生産量の維持が課題

2018年に米国で開かれた東北フェアの様子。米国は輸出重点国の一つだ
2018年に米国で開かれた東北フェアの様子。米国は輸出重点国の一つだ

今回は、青森県産品輸出促進を念頭に、農水産物・食品の輸出の現状と将来に焦点を当てる。

 日本からの農水産物・食品の輸出額は2013年の5千億円規模から、20年までに1兆円の目標を達成。現在、25年までに2兆円、30年までに5兆円の目標に向け、さまざまな輸出促進活動が実施されている。

 21年は中国や米国などを中心に、日本からの農水産食品分野の輸出額が伸びた。輸出先の上位は、中国(1200億円)、米国(千億円)、香港(900億円)。最大の輸出先は、05年以来、香港が首位だったが、21年に中国になった。

 輸出拡大実行戦略においては、輸出目標額上位10品目のうち、25年までの増加目標(伸びしろ)が最も大きく輸出拡大が期待されているのが牛肉(目標額1600億円)だ。調味料(850億円)、清涼飲料水(800億円)、ウイスキーとホタテ貝(いずれも700億円弱)、清酒(600億円)、菓子類(500億円弱)と続く。

 輸出重点国・地域では米国が現行輸出額の3倍を期待されている。同じように倍以上の中国と香港がともに1千数百億円規模で、次の台湾は香港の半分の700億円超、ヨーロッパ470億円、ベトナム140億円、その半分のシンガポールとなっている。

 青森県からの輸出・海外販路開拓の商談でも、こうした主要輸出先に向けた商談が多い。

 県からは農水産食品分野の輸出の半分余り(54%)をリンゴやその加工品で占めており、水産品は同分野のおよそ3分の1(36%)だ。県の輸出・海外ビジネス戦略では23年度までの5年間の中期計画で、リンゴ(生果4万トン)、ホタテ(1万トン)、リンゴジュースとコメ(それぞれ1500トン)、水産加工品(千トン)と目標額が設定されている。

 リンゴは例年、輸出が3万トン行くかどうかが、順調か否かの基準になっていて野心的な目標だ。現在、リンゴ輸出先で、台湾・香港向けが計92%のため、輸出先の多様化を目指したいところだが、タイ・ベトナムは2~4%で、需要はあっても3年先を見据えた園地・施設登録と新規販売計画をバイヤーと詰めなければ、現実的かつ安定した輸出にはつながりにくい生産地側の事情もある。

 養殖ホタテは国内需要と価格の影響を受けやすく、現在は輸出に回っている量が少なくなっている。今年は半成貝のキロ当たり入札平均単価が200円超と5年前並みの高値で、サバやイカの水産品も取れない。

 20年までの農水産品1兆円輸出で、水産品は輸出倍増(1700億円→3500億円)を成し遂げた品目群であり輸出の稼ぎ手だが、中長期的にみると、水産資源を輸出に回す以前に、日本全国で漁獲高が落ちている。農業・水産の就業労働人口は減少するため、効率を上げつつ、海外で売り上げを稼げるよう、現在の生産と輸出量を維持させていくことが課題となる。

 ※第4回は9月24日公開の予定です。

 
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