Free①「円安・原料高の影響」 迫られる戦略の見直し
国際ビジネスの不確実性は高まっている。円安の進行で原料・エネルギーなどの輸入コストが一段と上昇し、遠隔地になるほど物流コストが高騰している状況も相まって、青森のみならず、日本全国の企業は混乱の長期化を見据えてビジネス戦略の見直しを迫られている。
他国と比較して販売価格が低く抑えられている日本国内でも、この夏は値上げに踏み切っている企業が増えた。海外市場供給網に組み込まれている輸出入ではリスク分散を行いながら収益を上げていく工夫の積み重ねが必要となっている。
ジェトロ青森は、青森県産品の海外商流構築支援として、県内企業とともに海外販売網を有する国内外商社との商談を年間数百件行っている。
実感するのは、輸出を行っている多くの企業で新型コロナウイルス流行前との比較で小売価格を2倍、3倍に上げても、売れ行きが落ちない好循環になっている点だ。背景にあるのは海外と日本の金利差。日本よりも金利が高い海外では物価が上昇するとともに、収入も増加している。多少価格が高くても購入意欲には影響しないようだ。
国内向けのみに供給する企業よりも、海外と取引する企業の方が価格転嫁しやすい状況を享受できている。国内市場が縮小していく中、難しくてもあえて海外の活力を取り込む発想は、若い人材(人財)を県内で活用していく観点からも重要だと思う。
一方、海外で稼げていない県内製造業・サービス業でも輸入価格の上昇と無縁でいられる事業体は少ないのではないだろうか?
例えば、輸入に原材料を依存しているコーヒー・紅茶の専門店やカフェなどは、単なる値上げだけでは消費者の買い控えに直面する恐れがある。輸入コストの上昇を加味した新たな価値を生み出した新商品の導入などが今後さらに進むと思われる。円安による価格上昇を転嫁するための工夫が求められている。
最後に、今年上半期(1~6月)の輸出入動向をお知らせしたい。日本全国からの農水産物・食品の輸出は、2021年通年で1兆円に達したが、22年上半期はそれを上回るペースで、6500億円超となっている。米国、中国といった主要市場向けを中心に伸びた結果だ。
地域別通関統計で品目群別の動向をみると、北海道・北東北地域における上半期輸出額2600億円超のうち、最も多い鉄鋼は460億円(前年同期比33%増)と、21年上半期に続き堅調に推移している。
青森県内港湾からの輸出は、332億円(15%増)で、その87%を占める八戸港からの輸出が前年同期比で84%とやや振るわなかった。一方、県内への輸入はコスト上昇を反映して4割増えた。特に原油・石炭・天然ガスが前年同期比でそれぞれ1・5~2・4倍の輸入増に。輸入額は1758億円で、輸出額との差は5・3倍。原材料・エネルギー価格の上昇に加えて円安もあり、輸入と輸出の金額差は開くばかりだ。