Free「かおパス」で気軽にリピート 八戸市美術館、同一企画展フリーパス制度導入
八戸市美術館は開催中の企画展「持続するモノガタリ」(3月19日~6月6日)から、同一企画展を何度でも鑑賞できるフリーパス制度「かおパス」を導入した。2回の観覧で元が取れるため、熱心な美術ファンからは好意的な反応が寄せられている一方、コロナ禍もあり利用登録者数は思うように伸びていない。周知方法の工夫や近隣施設との連携など、気軽に入館し、複数回観覧してもらうための仕掛けづくりが課題となっている。
かおパスは、新型コロナウイルス感染対策で導入したサーモカメラの顔認証システムを使用し、利用者情報を登録する。2回目以降は顔認証を経てシールチケットを受け取り、「顔パス」入館が可能となる。
パス料金は各企画展観覧料の1・5倍が基準で、「持続するモノガタリ」は一般の場合、観覧料800円に対して1200円に設定。年間パス形式も検討されたが、常設展がないことや企画展の回数が変動するため現制度に落ち着いた。
2月までの開館記念展のアンケートで数多く寄せられた「観覧料が高い」という意見を踏まえ、同じ展示に繰り返し足を運びたいという声にも配慮して導入。利用者からは「いつでも手ぶらで来られるのがいい」と、気軽に鑑賞を楽しめることを評価する声が寄せられているという。
ただ、現在の企画展での登録者数は観覧者全体のおよそ1割と伸び悩む。同館は、導入開始までの準備期間が短く、十分周知できなかったと分析。佐藤慎也館長は「次回の印刷物には制度の告知も盛り込む予定で、反応も変わってくるのでは」と期待を込める。
登録者拡大には、複数回足を運びたくなる展示やイベントも重要だ。今回は前後期で作品を一部入れ替え。映像やキャプションを充実させ、じっくり観賞できる展覧会にした。また、学芸員と直接交流できるコーナーも設け、作品鑑賞にとどまらない魅力を持った企画運営を目指している。
かおパスと共に導入した駐車場割引は好調で、4月中旬には、封鎖していた番町側エントランスを開放。中心街から美術館への動線がよりスムーズになった。同館は、カフェとコワーキングスペースを兼ねた「エスタシオン」や八戸工業大の番町サテライトキャンパス(ばんらぼ)といった近隣の新施設オープンも追い風に、入館者の取り込みを図りたい考えだ。
佐藤館長は「テークアウトした飲食物を館内で食べてもいいし、これからの季節は広場も気持ちよく使ってもらえると思う」と話し、美術館の自由で幅広い活用をアピールする。