Free寂聴さん遺品、二戸市に寄贈へ 「町おこしに役立てて」
二戸市浄法寺町の天台寺名誉住職で、名誉市民の故瀬戸内寂聴さんが所蔵していた本約1万冊を含む大量の遺品が8日、市へ寄贈される。旧浄法寺町に寂聴さんを招いた元町長で、信頼の厚かった山本均さん(75)=仙台市=が遺品管理を任され、「二戸を全力で愛した寂聴さんの魂の灯を消さず、町おこしに役立ててほしい」と決意。自身が会長を務める「瀬戸内寂聴師を偲(しの)ぶ会」を通じて贈呈する。
山本さんによると、2021年11月に寂聴さんが99歳で亡くなった後、海外在住の遺族から遺品の扱いを一任されたという。
京都市の自宅に残された大量の遺品を、自身が借りた仙台市の倉庫に運搬。寂聴さんが現代語訳した「源氏物語」の本は、東北地方各地の大学や自治体などに贈った。残る大半は、旧町の活性化に力を尽くした寂聴さんの思いをくんで二戸市へ寄贈することにした。
昨年11月、浄法寺地区の旧太田小体育館に運び込んだ遺品の数は、中型トラックで3台分にも及んだ。約1万冊の蔵書は源氏物語などの訳書・著書に加え、親交のあった作家の小説、現代美術家・横尾忠則さんの画集など多ジャンルにわたる。
その他は漆器の皿やお膳、陶器、大型の書棚、書道用品、寂聴さんの法話が収録されたDVDなど100点余り。市浄法寺総合支所の職員が目録を作成するのに時間を要したが、ようやく寄贈の運びとなった。
市は今後、具体的な活用法を検討する。蔵書を広く読んでもらうため、公共施設の図書室や学校などに置くほか、寂聴さんが命名した温泉施設「天台の湯」の宿泊客への配布も考える。
山本さんは「寂聴さんの魂が宿った遺品を活用し、その思いを人々が共有してまちを盛り上げてほしい」と強調。同支所内の瀬戸内寂聴記念館に、周辺地域から来場者が増えるような取り組みも期待する。
他にも手元に蔵書が残っており、「本のまちを掲げる八戸など、二戸周辺で欲しい方がいれば寄付を考えたい」とし、地域間交流にも役立てたい意向だ。
37年前、30代の若い町長だった山本さんは寂聴さんを寺の住職に招き、寂れた町に人を呼び込もうと駆け回った。浄法寺地区在住で「偲ぶ会」副会長の田口俊夫さん(75)は、「まちおこしへの熱い思いを共有する2人は、深い信頼関係にあった」と当時を振り返る。多くの遺品を眺めながら「何とか地元で生かし、にぎわいにつなげたい」と願う。
藤原淳市長は「大変ありがたい。寄贈を機に寂聴さんが地域に注いだ情熱を受け継ぎ、天台寺周辺の活性化に向けた公民連携の活動も広げたい」と感謝した。