Free平和の願い、音に込め 八戸で「被爆ピアノ」コンサート
広島への原爆投下に耐えた「被爆ピアノ」を、市民が奏でるコンサートが14日、八戸市の「はっち」で開かれた。同市では2019年から毎年のように開催されてきたが、日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞直後とあって、例年より多くの聴衆が来場。出演者は音楽を楽しめる平和な世界への希求を込め、多彩な音色を響かせた。
被爆2世の調律師矢川光則さん(72)=広島市=が被害を受けたピアノを修復・所有し、01年からコンサートを続けている。
八戸では、爆心地から2・6キロの場所で被爆したホルゲル社製の通称「段原ピアノ」を使用した。市内外の33組が出演し、約90席は満杯。2階にも立ち見の聴衆が並び、演奏が終わるたびに盛大な拍手を送った。
同市の声楽グループ「根岸コーラス」で指揮を務めた沢田京子さん(86)は、伯母が広島で原爆の犠牲となり、いとこらが原爆症で苦しむ姿を目の当たりにしてきた。「私たちは戦争の残酷さと、平和のありがたさを体感した最後の世代。平和賞受賞を機に、歌声が伸びやかに響く世の中が続く大切さを呼びかけたい」と、大きな身ぶりで、豊かなハーモニーを届けた。
主催者の1人で八戸学院大短期大学部の中嶋栄子准教授は「多くの市民に、コンサートの意義が伝わったはず」と強調した。