Free【chou chou9月号 Pickup】小さな苔の世界
皆さんは「苔(こけ)テラリウム」を知っていますか。小さなガラスケースの中で苔を育てることを指し、近年、癒やしのインテリアとしても注目されています。
今回の特集は、そんな苔の世界のお話。「苔の青い森」の梅森敦子さんと菅原康彦さんに、苔テラリウムの魅力を教えていただきました。
苔テラリウムへの入り口はいろいろ。本などを参考に独学で制作してみたり、ワークショップに参加してみたり。作家のオリジナリティーあふれる作品を購入することもできます。
そこから始まる、苔のある暮らし。ガラスの中に広がるグリーンの景色を眺めているだけで、心が穏やかになって、どこまでも遠くへ行けそうです。ぜひ自分だけの小さな苔の世界を漂ってみてください。
【テラリウム豆知識】
テラリウムは、ラテン語の「テラ(terra)=大地・陸地」と「リウム(arium)=場所」を合わせた造語です。光が通る密閉された透明なケースの中で、陸上の生き物を育てる方法を言います。
19世紀のヨーロッパでは、薬草など生活に欠かせない植物を船で輸送するための手段に用いられていました。
【苔テラリウムってどんなもの?】
近年、癒やしのインテリアとして人気の「苔テラリウム」。「苔の青い森」の梅森敦子さんと菅原康彦さんに、苔テラリウムの魅力を教えていただきました。
【①管理が比較的ラク】
苔テラリウムはガラスの容器の中で苔を育てるので、水が循環して乾燥しにくいのが特徴です。そのため、水やりは霧吹きやスポイトを使い、2週間に1回程度行うだけでOK。反対に、与え過ぎには注意する必要があります。
苔が育つためには、光も大切です。直射日光ではなく、レースカーテン越しに光を当てましょう。LED(発光ダイオード)照明や蛍光灯の明かりでも、本が読める程度の明るさがあれば光合成できます。
【②毎日見守るのが面白い】
苔テラリウムの景色は、毎日少しずつ変化しています。苔の背丈がちょっと伸びたり、新芽が出たり。急にキノコや草が生えたりすることもあります。
普段長く過ごす部屋に苔テラリウムを置いて、苔の世界を観察する。そんなひとときを、日々のルーティンの中にぜひ取り入れてみてください。慌ただしく過ごす中でも立ち止まることができ、疲れが和らいだり、気持ちを切り替えられたりするかもしれません。
【③ガラスの中に多種多様な景色】
一言に苔テラリウムと言っても、ガラスの中に広がる景色は多種多様です。
例えば、梅森さんと菅原さんの作風も異なります。梅森さんは生き物や建物のミニチュアを組み合わせて、空想の世界を表現することが多いそう。「気軽に楽しめて、子どもも育てられる作品を」との思いからです。一方の菅原さんは、手元にある素材から、実在する自然の景色をイメージして再現。「作品が実際の場所を訪れるきっかけになれば」との願いを込めています。
【④ロマンがある!】
約5億年前、植物の起源である植物プランクトンは苔の姿で水中から陸上へ進出してきました。その苔が現在では木や草、花などに進化し、地球上で繁栄しています。さらに、驚くべきことに、現存する苔は5億年前から形を変えていません。水上に進出した時点で完成された姿だったのです。
苔は世界に約1万8000種類、日本に約1700種類、十和田市の奥入瀬渓流には約300種類存在しているそうです。その壮大さに、わくわくしてきませんか。
【プロフィール】
◇梅森 敦子さん (うめもり・あつこ) 山形県鶴岡市出身。小さい頃から農業や植物、苔に興味を持つ。弘前大農学部卒業後、山形市内の農業関係企業に約10年間勤務。結婚を機に十和田市へ移住し、「苔の青い森」として活動するようになる。十和田市在住。
◇菅原 康彦 さん(すがわら・やすひこ) 仙台市出身。小学生の頃から、水槽で魚や水草を育てる「アクアリウム」に熱中する。3年ほど前、転勤で三沢市へ。梅森さんと出会い、アクアリウムの知識や技術を応用して苔テラリウムを制作するようになる。仙台市在住。
【苔の青い森 information】
苔テラリウムをはじめとした苔作品を制作し、展示会やクラフト市などで販売。オーダーも可能で、購入後のメンテナンスにも力を入れている。ワークショップも随時開催。八戸市の南部会館で行われているイベント「ツキイチツクル」にも講師として参加している。菅原さんの作品は「植物屋ARAYA」(八戸市)で取り扱いあり。
でんわ:090-7068-2473
Instagram:@kokeno.aoimori.kokenyan
※本紙生活情報誌シュシュ9月号の特集記事をウェブ用に再編集しました。