Free【北奥羽の地名】板ノ沢(十和田市)/カヤ人形の伝統残す

北奥羽の地名
北奥羽の地名

十和田市深持の集落。深持史年表によると、地名はアイヌ語の「ユタナイ」に由来するとされ、ユタは臼、ナイは沢を意味し、かつては石臼や木臼を作っていた土地だったと考えられている。

 集落内にある御瀧大龍神(板ノ沢神社)の境内前に約3メートル、重さ約80キロの男女一対のカヤ人形を置く地域の伝統行事「カヤ人形結い」の風習が息づく。全国で見られる豊作祈願の伝統行事「虫送り」の一種との説や、無病息災を祈る魔よけとして作られたという説、またはその両方など、起源には諸説ある。

 十和田市史によるとカヤ人形結いの風習は、かつては藤坂や滝沢、立崎など市内の広範囲で見られたが、現在行われている地域は少ない。近くの梅集落では後継者不足のため2013年を最後に制作は休止中で、今では板ノ沢集落だけとなった。

 板ノ沢神社のカヤ人形の前にある立て看板には「古歴天明の餓死無き祈る」と記されている他、境内には江戸時代に建てられた餓死者供養塔があり、地域の苦難の歴史と住民の安寧への願いをうかがい知ることができる。

 
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