Free(26)増える新設法人 高坂健二・東京商工リサーチ青森支店長

新設法人、休廃業・解散、倒産 年次推移
新設法人、休廃業・解散、倒産 年次推移

意外だと感じる方も多いが、コロナ禍にあった2021年(1~12月)に全国で新しく設立された法人(以下、新設法人)は14万4622社と過去最多を記録した。また、直近の22年(1~12月)の新設法人は14万2189社(前年比1・6%減)と減少したものの、過去2番目の多さで14万社台を維持した格好だ。

 コロナ禍が直撃した飲食業、宿泊業、建設業などは減少した一方、税理士・社会保険労務士・行政書士・弁護士など、資格を生かした“士業”が増えた。記憶にも新しいが、緊急事態宣言が発出され、各種イベントも自粛、中止となるなど、経済が一部停滞した状況にあった一方で、着々と新しい企業が生まれていたのだ。

 この背景には、持続化給付金や家賃支援給付金など返済義務のない支援に加え、新型コロナ特例リスケジュール、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)など、さまざまな資金繰り支援が実施されたことがあり、新設法人も高水準をたどったと考えられる。

 さらに意外なことに22年の新設法人が前年から増加した11都道府県の中には青森県も含まれている。青森県では全国的な傾向と同様、人手不足に直面している建設業、運輸業の新設法人件数は前年比で減少したものの、飲食料品製造業、その他飲食料品、建築材料、機械器具卸売業などが増加し、全体を押し上げる形となった。

 同期間の22年における休廃業・解散は4万9625社(前年比11・8%増)、企業倒産は6428社(6・6%増)で、共に増加した。企業が倒産、休廃業、解散し市場から撤退することは非常に自然であり、その一方で新しい企業が生まれてくる。

 逆に考えると新しい企業が生まれるために、企業が淘汰とうたされているとも考えられる。その時代にそぐわなくなった、需要がなくなったのであれば、企業もお役御免となるのであるが、「倒産」に悪いイメージがあるのは債権者が存在し、その他従業員の収入がなくなるからであろう。そうならないために経営者は常に時代に合わせたビジネス、組織づくりが必要となる。

 22年の新設法人数を「国税庁統計年報」に基づく普通法人数(最新データは21年度)で除した都道府県別の「新設法人率」をみると、トップは沖縄県の7・53%。一方で新設法人率が最も低かったのは秋田県の2・68%だった。次いで山形県の2・74%、岩手県の2・78%と東北各県が続き、前年から新設法人が増加した青森県も、3・00%と全国で5番目に低かった。

 人口減少率が大きな地域ほど新設法人率が低い傾向にあり、まさに「企業」=「人」と言うことができる。このように考えると酷な言い方に聞こえるかもしれないが、企業の新陳代謝は必要不可欠なものであり、これを加速させることによってより時代にマッチした企業が生まれてくるであろう。

 
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