Free【北奥羽各駅めぐり】①奥中山高原駅 三セク移管後に駅名改称
岩手町との境界に近い一戸町中山の奥中山高原駅。1891年に日本鉄道(当時)の「中山駅」として開業し、国有化後の1915年に「奥中山駅」と改称。国鉄の分割民営化を経て2002年、東北新幹線八戸開業に伴い発足した第三セクター・IGRいわて銀河鉄道に移管され、現在の駅名へと改められた。
標高427メートルの十三本木峠(奥中山峠、中山峠)は国鉄、JR時代の旧東北線で最高地点。前後の急勾配区間は、蒸気機関車の時代に同線最大の難所とされ、SL3重連運転が見られた名所だった。併走する国道4号の最高地点でもある。
地域では酪農と高原野菜の栽培が盛ん。レタスの生産量は東北一。駅から車で約15分の所にスキー場や温泉施設などがある。
ホームは2面3線。三セク移行後の乗降人数は初年度の02年度が1日平均481人でピーク。11年度以降は350~370人台で、18年度は365人だった。
話題集める“看板犬”
“犬の駅長”も話題に。委託駅員の本木ヨコさん(76)が飼うヨークシャーテリアの雄「マロン」が08年、「名誉駅長」になった。
体高約30センチ、体重約1.5キロ。特注の犬用の制服と制帽、作業服に身を包み、愛らしい風貌と人懐こい性格で瞬く間に人気者になった。しかし、元々病弱だったこともあり、09年に気管支炎のため9歳で生涯を閉じた。
13年から同種の雄4歳の「マック」が「駅長見習い」として活躍したが、17年に駅前で車にひかれ死んだ。ただ、事故当事者のあまりの落ち込みぶりに「少しでも早く後継者を」と思った本木さんは約1カ月後、当時6カ月の雄「マオ」を“看板犬”に起用した。
マオは現在、体高約50センチ、体重約5キロまで成長。普段はやんちゃだが、乗降客の前に出ると、澄まし顔でなでられる。地域には福祉施設も多く、電車で通う施設利用者と周辺を散歩するのも楽しみの一つだ。
駅構内に花を植えたり、大工の夫末太郎さん(82)にオブジェの水車を造ってもらったりと、環境整備に取り組んできた本木さん。マオにも「駅長にはまだまだ。でも、大切な看板犬です」と信頼を寄せる。