Free(19)利益配分のスタンス 佐藤雅裕・青森財務事務所長
長かった青森の冬の寒さもなりを潜め、日増しに春の訪れを感じられるようになってきた。年度末ということで、進学、就職、異動などの準備で忙しい日々を送っている方も多いだろう。また3月は、企業の決算期というイメージをお持ちの方も多いかもしれない。国税庁のデータによると、決算期を3月としている企業は2割近くを占め、資本金1億円以上の企業に限ると半数以上を占めているそうだ。
決算は、企業の状態を数値面から多角的に分析することにより、経営判断のための材料が得られるので非常に重要なイベントである。新規事業への参入や不採算事業の整理、利益配分をどうするかなど、経営者が考えるべきことは多い。
青森財務事務所が3月13日に発表した法人企業景気予測調査によると、県内企業の2022年度の売上高は、全産業で前年度比4・6%の増収見込み、業種別では製造業8・8%、非製造業2・1%と、いずれも増収見込みであった。
要因としては、人流の回復による需要増加など、景況が改善してきたことによる増収も一部で確認できているものの、小売業などにおいては、物価高騰による販売価格の上昇が増収に寄与している面もあり、全体的に景況が改善しているとは言い切れない。
一方で経常利益は、全産業で前年度比13・8%の減益見込み、業種別では製造業23・8%、非製造業2・1%と、いずれも減益見込みであった。要因としては製造業、非製造業のいずれも、原材料価格や電気代などが高騰している中、そのコストを販売価格に転嫁しきれていないことが大きい。
以上のとおり、22年度は増収減益となる県内企業が多数を占めそうだが、それに対して企業はどのような経営戦略を考えているのか。この法人企業景気予測調査では、企業の「利益配分のスタンス」についても調査している。
今期の利益配分で最も重要度が高いものを挙げてもらったところ、一番多かったのは、「設備投資(27・0%)」で、次いで「内部留保(24・3%)」、「従業員への還元(20・3%)」と続いた。この調査については、同様の選択肢で以前から実施しているが、コロナ禍前と比較すると「従業員への還元」の割合が増加傾向にある。
多くの県内企業が減益となっている中、今回のこの調査結果は興味深い。実際、既に賃上げを回答している県内企業も出てきているほか、賃上げに関する各種アンケート調査でも、多くの県内企業が賃上げを前向きに検討しているという結果が出ているようだ。
企業が最適な利益配分を行い、いかにして企業の成長につなげていくかは、経営戦略上非常に重要である。その手段の一つとして賃上げにより優秀な人材を確保することで付加価値の高い商品やサービスを生み出し、収益力を高め、さらなる賃上げの原資を確保していく。今回の調査でみられた「利益配分のスタンス」の変化が、このような企業の成長の好循環につながっていくことを期待したい。