Free(12)県民の時間の使い方 松田英嗣・あおもり創生パートナーズ取締役
今年の「大寒」は1月20日から2月3日までの15日間であり、まさに今が1年で最も寒さが厳しい季節とされている。199名が犠牲となった八甲田雪中行軍もこの季節の悲劇だ。
ちなみに、大寒は「立春」「立秋」などと共に、1年を24に区分した季節の一つであり、それぞれの日付は国立天文台が決定する。毎年2月最初の官報に掲載される「暦要項(れきようこう)」で公示されることにより、翌年の二十四節気のスケジュールが確定する仕組みとなっている。
この二十四節気の起源は古く、中国の戦国時代にまでさかのぼる。日本では平安の頃から使われ始めたのだという。昔から人々は、暦や時計を目安に、季節や時間に区切りをつけて暮らしてきた。時間の長さが平等に与えられていることは、今も昔も変わらない。
しかし、「社会生活基本調査」によると、24時間の使い方は都道府県により大きく異なる。この調査は、総務省が国民の生活時間の配分や余暇時間における主な活動状況などを把握することを目的に、5年ごとに実施している。
この中で、1日の生活行動を20種類に分類し、睡眠、食事など生理的に必要なものを1次活動、仕事、家事など社会生活を営む上で義務的な性格の強いものを2次活動、これら以外各人が自由に使える時間における活動を3次活動と区分の上、この分類による時間の使い方を公表している。
青森県と首都圏で比較すると、青森県民の時間の使い方の特色が見えてくる。
まず生理的活動とされる1次活動では、「睡眠」が首都圏と比べ20分長いことに気が付く。ちなみに青森県民の睡眠時間は全国トップの8時間8分となっている。次いで、義務的活動とされる2次活動では「仕事」に費やす時間が12分長い。その分「通勤・通学」が13分短いことから相殺されていると捉えることもできるが、本県の労働生産性の低さに思いが至る。
最後に、自由に使える時間となる3次活動だが、「テレビ・ラジオ…」を楽しむ時間が30分長い一方で、「学習・自己啓発…(学業以外)」が9分、「趣味・娯楽」が11分、それぞれ短い。なお、県民が「テレビ・ラジオ…」を楽しむ時間は全国で3番目に長い2時間33分、「学習・自己啓発…」など自ら学ぶ時間は5分で全国最下位に甘んじている。総じて青森県民はよく働き、余暇はテレビを楽しみ、睡眠時間もたっぷり取っていると言えそうだ。
このところ、大幅賃上げ実施に関するニュースが相次いでいる。本県でも、物価上昇が暮らしの重荷になる中で、問われているのは賃上げの幅や広がりと持続性だ。そのために必要なことは、生産性の向上に尽きるが、それは企業側のみで実現できることではない。そこで働く従業員もまた、自主的にスキル向上に向け学びを続け、個々の生産性向上に努める必要がある。それが持続的賃上げの実現をバックアップすることにつながる。
テレビを見る時間を削り、自己啓発に励む―。大寒の夜、自己のスキルアップを本気で考えてはどうだろう。それが物価上昇に対抗する強力な手段の一つになるはずだ。
とはいえ、自分の身に置き換えると、余暇はテレビを楽しみ、たっぷり眠る生活も捨てがたい。