Free狂言の奥深い笑いに浸り 野村万作さん、萬斎さんの「八戸特別公演」
人間国宝の野村万作さん、狂言にとどまらない幅広い分野で活躍中の野村萬斎さんらによる「狂言 八戸特別公演」(デーリー東北新聞社主催)が12日、八戸市公会堂で開かれ、訪れた観客が狂言の奥深い笑いの世界に浸っていた。
上演された演目は「千鳥」と「舟渡聟(ふなわたしむこ)」で、いずれも酒にまつわる物語。「千鳥」は萬斎さん演じる太郎冠者(かじゃ)が、酒を用意するように主人に命じられたが、支払いがたまっているため酒屋は売ってくれず―という内容。酒を手に入れようと策を弄(ろう)する太郎冠者のコミカルなしぐさに観客は見入っていた。
「舟渡聟」は初対面のしゅうとへのあいさつで、妻の実家に行くため渡し舟に乗った婿が、酒好きの船頭にあの手この手でせがまれて手土産の酒を振る舞ってしまう。軽くなったたるを持って家を訪ねる―という話。実はしゅうとだった船頭を万作さんが演じ、舟に乗っている様子をさお1本で表現する巧みな動きや、婿との軽妙なやりとりで会場を笑いの渦に包んだ。
新型コロナウイルスの影響で見送った昨年9月の振り替え公演で、観客はこの日を待ちわびていた様子。八戸市白銀の越後友子さん(52)は「せりふも思ったより難しくなかった。思わず笑ってしまう場面ばかりだった」と振り返った。