Free【Dashセレクション】ヴァンラ―レ八戸・秋吉泰佑 経験豊かなベテラン「チームプレーを徹底する」
ヴァンラ―レ八戸が昨季を上回る成績を狙う上で活躍が欠かせないのがMF秋吉泰佑(31)。切れのあるドリブルやチャンスメークで、今季はこれまで2得点2アシストをマークしている。「チームのために尽力するのが自分の持ち味。情熱あふれるプレーを八戸のファンに見せたい」と、飛躍を誓っている。
(9月10日発行の月刊スポーツマガジンDashから記事をセレクトしてお届けします)
熊本の中高一貫校、ルーテル学院のサッカー部出身で、高校卒業前には「プロになりたい」と夢を追い掛けて複数のJリーグクラブの練習に参加。実力が認められ、2008年には新潟と3年契約を結んだ。契約内容は「2年間シンガポールの下部組織で経験を積み、3年目からJリーグでプレーする」というものだった。
18歳で海外挑戦。言語などに不安はあったが、「持ち前の明るさと身振り手振りで切り抜けた」。試合にも多く出場したものの、2年間の生活には納得していなかった。
「このまま日本に帰ってもJ1では通用しない。もっと海外に挑戦したい」。クラブ側との交渉の末、シンガポールの強豪チームに移籍。その後もブルガリア、オーストリアなどを渡り歩き、自らを厳しい環境に置くことでスキルを磨いた。
海外挑戦から約8年。「もう若くない、Jに挑戦したい」と思いが募り、Jクラブに練習参加。15年には当時J1の甲府へ移籍が叶い、悲願のJリーガーとなった。
ベンチ入りはできても試合には起用してもらえず、半年でJ2岡山にレンタル移籍。そこでも出場は1試合にとどまり、わずか1季で退団を余儀なくされた。自らのプレースタイルを顧みると、日本で通用しない理由は明確だった。「海外は個を重視するプレースタイルだが、日本でもひとりよがりなプレーをしていた。組織的な戦術を理解できていなかった」
17年シーズンを前に、新たな所属先を求めて複数チームの練習に参加していた中、JFLラインメール青森の葛野昌宏監督(当時)との出会いが転機となった。
契約後は“チームサッカー”を一からたたき込まれた。チームプレーに徹することで、選手として完全復活を遂げた。「日本のサッカーを思い出させてくれた。おかげで息を吹き返すことができた」
18年には当時JFLだった八戸に、葛野氏と共に加入。「J3昇格という明確な目標があったため、チーム優先の気持ちがさらに強まった」。ここでもほとんどの試合に出場し、翌年からのJリーグ参入に大きく貢献した。
八戸3季目の今季は12試合中11試合に出場。ここまで2得点2アシストと好調を維持しているが、「勝利のためのチームプレーが最優先なので」と個人成績は意識していない。「J2、J1を狙う覚悟でチームに貢献したい。クラブとしてさらなる高みに」。経験豊かな熱きベテランが八戸のために力を注ぐ。
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